(債務者の危険負担等)
第五百三十六条 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

建物が滅失したとき、売主・買主どちらがリスクを負うか?

危険負担というのは、不動産の例で言えば、売買契約後に建物が滅失したときに誰がどうリスクを負うかという話がわかりやすいでしょう。

条文を引用しながらわかり易く解説していきます。

第1項

当事者双方の責に帰することができない事由とは、売主・買主どちらにも帰責事由がないときです。例えば天災地変や他人の放火等で建物が滅失したときなどが挙げられます。

売主は引き渡しの履行が不能となってしまいますが、買主は反対給付の履行、つまり代金の支払いを拒むことができます。

第2項

買主の帰責事由で、売主が建物の引き渡しを履行することができなくなった場合は、買主は代金の支払いを拒むことはできません(買主のせいで建物が滅失したような場合です)。この場合、売主が利益を得たときは、買主に償還しなければならないとしています。

第2項は以下の例でわかりやすく解説します。

売主の業者が自費でリフォーム後に建物を引き渡すとした契約で、リフォーム工事前に買主の帰責事由で滅失した場合(火災など)を考えてみましょう。

→このとき買主は売買契約で定めた代金の支払いを拒むことはできません

このとき売主は建物のリフォーム工事が出来なくなっています。つまり売主はリフォームを免れたことで利益を得ていますが(リフォーム費の支払いを免れた)、このリフォーム費用は、買主に償還しなければなりません

また売主が火災保険に入ってた等で保険金が入ってた場合、保険金を買主に渡さなければなりません。

不動産売買契約の条文例

不動産売買契約では以下のような条文を用意しています。

★引渡し完了前の滅失・損傷

1 本物件の引渡し完了前に、天災地変、その他売主または買主いずれの責にも帰することのできない事由により、本物件の全部または一部が滅失または損傷した場合、以下の通りとします。

(1)本物件の全部が滅失し、または、本物件に修補不能な損傷が生じた場合、売主および買主は、相手方当事者に書面で通知することにより、本契約を解除することができます。また、買主は、本契約が解除されるまでの間、売買代金の支払いを拒むことができます。損傷の程度が甚大で、修補に多額の費用を要すると認められる場合も同様とします。

(2)本物件に修補可能な程度の損傷が生じた場合、売主は、買主に対し、その責任と負担において、本物件を修補して引渡すものとし、買主は、当該修補に必要な合理的期間、本物件の引渡しが延期されることについて承諾します。

(3)買主は、本物件の滅失または損傷に起因して買主に生じた損害について、売主に対して何ら請求することはできません。

2 前項に基づき本契約が解除された場合、売主は、買主に対し、本契約に基づく受領済みの金員を無利息にてすみやかに返還します。

1番は売主・買主の帰責事由なしで滅失した場合、「契約解除ができること」と「買主が代金支払を拒めること」としています。3番では帰責事由がないとき、買主は売主に「損害賠償請求できない」ことを言っています。