住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)によって、新築住宅の売主には10年間の瑕疵担保責任が課されています。

一方で、いざ不具合が発見されて補修が必要となったときに、宅建業者に資金がなかったり、倒産してたりして履行されない場合があります。そこでその責任をしっかり履行させるために、資力確保義務が課されました。それが「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」通称「住宅瑕疵担保履行法」です。

宅建業者にも関わってきますし宅建士試験にも度々出題されるので、重要な部分だけここで整理しておきましょう。

これによって宅建業者が引き渡す新築について「保険の加入」または「保証金の供託」が義務付けられています。

品確法
新築住宅の売主は10年間の瑕疵担保責任

住宅瑕疵担保履行法
資力確保せよ(保険か供託)

言葉の定義

新築住宅とは?

「新築住宅とは築1年以内で、未使用のもののこと」です。

対象 戸建・分譲マンション・賃貸住宅・グループホーム
対象外 事務所・倉庫・物置・車庫・ホテル・旅館・福祉事業を行う施設・仮設住宅

勘違いしないように整理しておくと、

  • 築1年以内で譲渡はされたけど未使用→新築
  • 築1年以内で使用済み→中古
  • 未使用のまま築1年超→中古

となります。

瑕疵とは?

種類・品質に関して契約の内容に適合しない状態をいいます。

→構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く

住宅の構造耐力上主要な部分・・・基礎、土台、屋根、柱、壁など
雨水の侵入を防止する部分・・・屋根、外壁など
については瑕疵担保責任を負わなければいけない、ということです。(品確法施行令 第5条(住宅の構造耐力上主要な部分等)
第五条 法第九十四条第一項の住宅のうち構造耐力上主要な部分として政令で定めるものは、住宅の基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう。)、床版、屋根版又は横架材(はり、けたその他これらに類するものをいう。)で、当該住宅の自重若しくは積載荷重、積雪、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支えるものとする。
2 法第九十四条第一項の住宅のうち雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 住宅の屋根若しくは外壁又はこれらの開口部に設ける戸、わくその他の建具
二 雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち、当該住宅の屋根若しくは外壁の内部又は屋内にある部分

特定住宅瑕疵担保責任とは?

特定住宅瑕疵担保責任とは何かというと、住宅品質確保法の94条と95条に規定しています。(住宅瑕疵担保履行法2条1項5号5 この法律において「特定住宅瑕疵担保責任」とは、住宅品質確保法第九十四条第一項又は第九十五条第一項の規定による担保の責任をいう。

94条の方は工事の請負人について(住宅の新築工事の請負人の瑕疵担保責任)
第九十四条 住宅を新築する建設工事の請負契約(以下「住宅新築請負契約」という。)においては、請負人は、注文者に引き渡した時から十年間、住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの(次条において「住宅の構造耐力上主要な部分等」という。)の瑕疵かし(構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く。次条において同じ。)について、民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百十五条、第五百四十一条及び第五百四十二条並びに同法第五百五十九条において準用する同法第五百六十二条及び第五百六十三条に規定する担保の責任を負う。
。で、95条の方は宅建業者(新築住宅の売主の瑕疵担保責任)
第九十五条 新築住宅の売買契約においては、売主は、買主に引き渡した時(当該新築住宅が住宅新築請負契約に基づき請負人から当該売主に引き渡されたものである場合にあっては、その引渡しの時)から十年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵かしについて、民法第四百十五条、第五百四十一条、第五百四十二条、第五百六十二条及び第五百六十三条に規定する担保の責任を負う。
に関わってくる部分です。

95条第1項の概要

新築住宅の売買契約において、売主は、買主に引き渡した時から10年間住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵について、以下の規定に基づく担保責任を負います。

  • 民法第415条(債務不履行による損害賠償)
  • 民法第541条(催告による解除)
  • 民法第542条(催告によらない解除)
  • 民法第562条(買主の追完請求権)
  • 民法第563条(買主の代金減額請求権)

なお、住宅が住宅新築請負契約に基づき請負人から売主に引き渡された場合は、その引き渡しの時から10年間となります。

95条第1項の解説

新築住宅の売買契約では、売主は住宅を引き渡してから10年間、その住宅の構造耐力上主要な部分に関する瑕疵について担保責任を負います。「追完請求」「代金減額請求」「解除」「損害賠償」が含まれます。

住宅が請負契約に基づいて売主に引き渡された場合も同様に、引き渡し時から10年間の担保責任があります。

ということで、これが特定住宅瑕疵担保責任の定義となります。

資力確保措置が義務付けられるパターン

以下の場合に、資力確保措置が義務付けられています。(住宅瑕疵担保履行法2条7項2号ロロ 特定住宅販売瑕疵担保責任に係る新築住宅に住宅品質確保法第九十五条第一項に規定する瑕疵がある場合において、宅地建物取引業者が相当の期間を経過してもなお当該特定住宅販売瑕疵担保責任を履行しないときに、当該新築住宅の買主(宅地建物取引業者であるものを除く。第十九条第二号を除き、以下同じ。)の請求に基づき、その瑕疵によって生じた当該買主の損害を塡補すること。
売主→宅建業者
買主→宅建業者以外

ということは、「買主が宅建業者のときは適用なし」ですし「宅建業者が売主じゃなくて媒介・代理で関与したときは適用なし」ですね。

表でまとめ

資力確保の方法について

  • 宅建業者は、過去10年間に自ら売主となって買主に引き渡した新築住宅について、買主に対する瑕疵担保責任を確保するために、住宅販売瑕疵担保保証金を供託する必要があります。(住宅瑕疵担保履行法11条1項第十一条 宅地建物取引業者は、毎年、基準日から三週間を経過する日までの間において、当該基準日前十年間に自ら売主となる売買契約に基づき買主に引き渡した新築住宅について、当該買主に対する特定住宅販売瑕疵担保責任の履行を確保するため、住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしていなければならない。
  • もし宅建業者が瑕疵担保責任保険に加入し、買主に対してその証明を提供している場合、その新築住宅については保証金の供託を免除されます。(住宅瑕疵担保履行法11条2項2 前項の住宅販売瑕疵担保保証金の額は、当該基準日における同項の新築住宅(当該宅地建物取引業者が住宅瑕疵担保責任保険法人と住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結し、当該買主に、保険証券又はこれに代わるべき書面を交付し、又はこれらに記載すべき事項を記録した電磁的記録を提供した場合における当該住宅販売瑕疵担保責任保険契約に係る新築住宅を除く。以下この条において「販売新築住宅」という。)の合計戸数の別表の上欄に掲げる区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる金額の範囲内で、販売新築住宅の合計戸数を基礎として、新築住宅に住宅品質確保法第九十五条第一項に規定する瑕疵があった場合に生ずる損害の状況を勘案して政令で定めるところにより算定する額(第十三条において「基準額」という。)以上の額とする。

つまり資力確保措置は、「瑕疵担保責任保険の加入」または「保証金の供託」のいずれかを選べるということです。

①住宅販売瑕疵担保保証金の供託とは

毎年、基準日(3月31日)から3週間を経過する日までの間に、(つまり4月21日までOK)基準日前10年間に引きわたした新築住宅について、住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしていなければなりません。(住宅瑕疵担保履行法11条1項第十一条 宅地建物取引業者は、毎年、基準日から三週間を経過する日までの間において、当該基準日前十年間に自ら売主となる売買契約に基づき買主に引き渡した新築住宅について、当該買主に対する特定住宅販売瑕疵担保責任の履行を確保するため、住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしていなければならない。

金額 基準日前10年間に引き渡した新築住宅の合計戸数をもとに計算
床面積55㎡以下の戸建は2戸で1戸と数える。(第11条3項3 前項の販売新築住宅の合計戸数の算定に当たっては、販売新築住宅のうち、その床面積の合計が政令で定める面積以下のものは、その二戸をもって一戸とする。)(施行令6条第六条 法第十一条第三項の政令で定める面積は、五十五平方メートルとする。
1戸あたり最低2000万円
何で供託 現金、有価証券(国債・・100%  地方債・・90%  その他・・80%)(第11条5項5 第一項の住宅販売瑕疵担保保証金は、国土交通省令で定めるところにより、国債証券、地方債証券その他の国土交通省令で定める有価証券をもって、これに充てることができる。
供託先 宅建業者の主たる事務所の最寄りの供託所(法務局)(第11条6項6 第一項の規定による住宅販売瑕疵担保保証金の供託は、当該宅地建物取引業者の主たる事務所の最寄りの供託所にするものとする。
保証金の還付によって、保証金が不足したら 還付があった旨の通知書を受けた日から、または不足することとなったことを知った日から2週間以内に不足額を供託しなければいけない。さらに供託後の2週間以内に、免許権者に届出なければいけない。(法第16条第十六条 第七条から第九条までの規定は、供託宅地建物取引業者について準用する。で準用する法第7条第七条 供託建設業者は、前条第一項の権利の実行その他の理由により、住宅建設瑕疵担保保証金が基準額に不足することとなったときは、法務省令・国土交通省令で定める日から二週間以内にその不足額を供託しなければならない。
2 供託建設業者は、前項の規定により供託したときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨をその建設業法第三条第一項の許可を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。
)(施行規則22条で準用する10条第十条 法第七条第二項の規定による届出は、同条第一項の規定により供託した日から二週間以内に、別記第四号様式による届出書により行うものとする。
2 前項の届出書には、当該供託に係る供託物受入れの記載のある供託書の写しを添付しなければならない。

この供託により、新築住宅の買主は売主である宅地建物取引業者が瑕疵担保責任を果たさない場合でも、供託所を通じて損害の補償を受けることができます。

供託所の所在地等の説明

宅建業者が住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしている場合、新築住宅を売る際には、買主が安心して購入できるように、住宅の保証金がどこに供託されているかなどの重要な情報を提供する必要があります。具体的には、以下のことを行います。(法第十五条第十五条 供託宅地建物取引業者は、自ら売主となる新築住宅の買主に対し、当該新築住宅の売買契約を締結するまでに、その住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしている供託所の所在地その他住宅販売瑕疵担保保証金に関し国土交通省令で定める事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。

書面の交付:書面に供託所の所在地などの情報を記載し、買主に渡します。

説明の義務:渡した書面の内容を、買主に対してきちんと説明します。

これにより、買主は住宅に万が一欠陥があった場合にも、保証金がどこに供託されているかを知ることができ、適切に対応できるようになります。

住宅販売瑕疵担保保証金の取り戻し

基準日において、保証金の額が、当該基準日に係る基準額を超える事となった時は、その超過額を取り戻すことができます。(法第16条で準用する法第9条第九条 供託建設業者又は建設業者であった者若しくはその承継人で第三条第一項の規定により住宅建設瑕疵担保保証金の供託をしているものは、基準日において当該住宅建設瑕疵担保保証金の額が当該基準日に係る基準額を超えることとなったときは、その超過額を取り戻すことができる。

ただし免許権者の承認をうけなければなりません。

②住宅販売瑕疵担保責任保険契約とは

この法律において「住宅販売瑕疵担保責任保険契約」とは、次の要件を満たす保険契約を指します。(住宅瑕疵担保履行法2条1項7号7 この法律において「住宅販売瑕疵担保責任保険契約」とは、次に掲げる要件に適合する保険契約をいう。
一 宅地建物取引業者が保険料を支払うことを約するものであること。
二 その引受けを行う者が次に掲げる事項を約して保険料を収受するものであること。
イ 住宅品質確保法第九十五条第一項の規定による担保の責任(以下「特定住宅販売瑕疵担保責任」という。)に係る新築住宅に同項に規定する瑕疵がある場合において、宅地建物取引業者が当該特定住宅販売瑕疵担保責任を履行したときに、当該宅地建物取引業者の請求に基づき、その履行によって生じた当該宅地建物取引業者の損害を塡補すること。
ロ 特定住宅販売瑕疵担保責任に係る新築住宅に住宅品質確保法第九十五条第一項に規定する瑕疵がある場合において、宅地建物取引業者が相当の期間を経過してもなお当該特定住宅販売瑕疵担保責任を履行しないときに、当該新築住宅の買主(宅地建物取引業者であるものを除く。第十九条第二号を除き、以下同じ。)の請求に基づき、その瑕疵によって生じた当該買主の損害を塡補すること。
三 前号イ及びロの損害を塡補するための保険金額が二千万円以上であること。
四 新築住宅の買主が当該新築住宅の売主である宅地建物取引業者から当該新築住宅の引渡しを受けた時から十年以上の期間にわたって有効であること。
五 国土交通大臣の承認を受けた場合を除き、変更又は解除をすることができないこと。
六 前各号に掲げるもののほか、その内容が第二号イに規定する宅地建物取引業者及び同号ロに規定する買主の利益の保護のため必要なものとして国土交通省令で定める基準に適合すること。

保険料は宅地建物取引業者が支払うことが条件です。

②保険の内容
イ 宅地建物取引業者が瑕疵担保責任を果たした場合、その際に発生した損害を保険が補償します。
ロ 宅地建物取引業者が瑕疵担保責任を果たさない場合、買主の請求によりその損害を保険が補償します。

つまり宅建業者が引き渡した新築に欠陥があって、宅建業者が修理等をして費用がかかった場合に、保険会社から保険金が出て保証するものとなります。
または新築に欠陥があって買主が宅建業者に修理等を請求したのに、やらなかった場合、買主から保険会社に請求することができるものとなります。

③保険金額は最低でも2,000万円以上でなければなりません。

④保険契約は、新築住宅の引渡しから10年以上有効である必要があります。

⑤保険契約は、特別な許可(国土交通大臣承認)がない限り、変更や解除ができません。

⑥保険契約の内容は、国土交通省令で定める基準を満たし、取引業者と買主の利益を守るものでなければなりません。

どんな保険法人があるかは国土交通省のこちらのページも参照してみましょう。

この保険契約により、新築住宅の買主は売主である宅地建物取引業者が瑕疵担保責任を果たさない場合でも、保険を通じて損害の補償を受けることができ、安心して住宅を購入することができます。

資力確保措置の状況に関する届出

新築住宅を引き渡した宅建業者は、基準日ごとに免許権者に対して、資力確保措置の状況について届出を行わなければなりません。(法12条1項第十二条 前条第一項の新築住宅を引き渡した宅地建物取引業者は、基準日ごとに、当該基準日に係る住宅販売瑕疵担保保証金の供託及び同条第二項に規定する住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結の状況について、国土交通省令で定めるところにより、その宅地建物取引業法第三条第一項の免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事(信託会社等にあっては、国土交通大臣。次条において同じ。)に届け出なければならない。

届出先 免許権者
期限 基準日から3週間以内。つまり毎年3月31日からの3週間だから‥4月21日までOK。(施行規則16条第十六条 法第十二条第一項の規定による届出は、基準日から三週間以内に、別記第七号様式による届出書により行うものとする。
届出期間: 4月1日~4月21日 (行政機関の休日ならその翌開庁日)
届出をしないと? 基準日の翌日から50日を経過した日以後は、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結してはならない。つまり5月20日までOKで5月21日からNG。(法第13条第十三条 第十一条第一項の新築住宅を引き渡した宅地建物取引業者は、同項の規定による供託をし、かつ、前条第一項の規定による届出をしなければ、当該基準日の翌日から起算して五十日を経過した日以後においては、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結してはならない。ただし、当該基準日後に当該基準日に係る住宅販売瑕疵担保保証金の基準額に不足する額の供託をし、かつ、その供託について、国土交通省令で定めるところにより、その宅地建物取引業法第三条第一項の免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事の確認を受けたときは、その確認を受けた日以後においては、この限りでない。

【解除】不足分の保証金の供託→免許権者による確認で解除となる

サンプルのカレンダーで示してみると以下の様にイメージできます。