宅建士のかねやまです。

訳あり物件を売却したい、といった相談はあまり多くはありませんが、本人に自覚が無く持ち込まれる事もあるので、需要は多いだろうと記事にしてみました。

人によっては訳あり物件だと認識してない場合もあるし、認識しつつ来店される方もいますね。なかなか売却難易度は高いのでじっくり取り組みましょう。

自分の物件て訳あり?訳あり物件の定義とは

訳あり物件とは、心理的・物理的要因により通常より価格が低く、買い手や借り手が付きにくい不動産のことです。 事故物件、再建築不可物件、老朽化物件などが含まれ、簡単には売却できません。

代表的な訳あり物件の種類

訳あり物件の種類と、売却のハードルを示してみました。

1️⃣心理的要因による訳あり物件

  • 事故物件
    過去に事件・事故が起きた物件(殺人、自殺、孤独死、火災など)🔥🔥
    孤独死が発覚するまでに時間がかかり、特殊清掃が必要だった物件🔥🔥
  • 周辺環境に問題がある物件
    暴力団の事務所や風俗店が近くにある物件🔥🔥🔥
    騒音がひどい物件(隣人トラブル、周辺の工場の騒音)🔥🔥🔥
    墓地や火葬場が近い物件🔥🔥
    線路沿いで騒音や振動が大きい物件🔥🔥
    繁華街の近くで治安が悪い物件🔥
  • 近隣トラブルのある物件
    隣人や周辺住民とのトラブルの記録がある物件 🔥🔥
    クレーマーや騒音おばさんのような住民が近くにいる物件🔥🔥🔥
    反社会的勢力が出入りしている可能性のある物件🔥🔥🔥
  • 事故の経緯が公表されていない物件
    過去の出来事について詳しく説明されない物件(後々トラブルになりたくないので不動産屋も扱いに困る)🔥🔥
    オーナーが何度も変わっている物件(不安要素あり)🔥

2️⃣法的要因による訳あり物件

  • 借地権付き物件
    土地が自分のものではない物件(地主に地代を払う必要がある)🔥🔥🔥
  • 権利関係が複雑な物件
    共有名義で複数人が権利を持っていて反対してる🔥🔥🔥
    相続争いが解決していない物件🔥🔥🔥
    差押え中の物件🔥🔥
  • 再建築不可物件
    再建築ができない土地に建てられた物件(例:接道義務を満たしていない)🔥
  • 未登記の物件
    建物や土地が登記されていない物件(法的トラブルのリスクあり)🔥

3️⃣物理的要因による訳あり物件

  • 老朽化が進んだ物件
    建物が築50年以上で、耐震基準を満たしていない物件🔥
    シロアリ被害や雨漏りがある物件🔥
  • 構造上の問題がある物件
    傾いている建物や地盤が弱い土地に建つ物件🔥🔥
    違法建築(増改築で違法になっている)🔥
  • リフォーム費用が莫大にかかる物件
    内装がボロボロで解体が必要なレベルの物件🔥
    擁壁の上に建っていて、擁壁がボロい🔥🔥

4️⃣ロケーションによる訳あり物件

  • 周辺の土地柄が悪い物件
    治安が悪いエリアにある物件🔥🔥
    犯罪率が高い地域にある物件🔥🔥
    過疎地で需要が少ない物件🔥🔥
  • 自然災害のリスクが高い物件
    土砂災害警戒区域内の物件🔥🔥
    内水や氾濫の実績がある物件🔥🔥
    津波のリスクがある沿岸部の物件🔥🔥

5️⃣金融・費用面での訳あり物件

  • 賃料が異常に安い物件
    相場よりも安すぎる物件(何か理由がある可能性が高い)🔥
    マンションで管理費や修繕積立金が高額な物件(滞納者がいる、売主が滞納者だった)🔥
  • 売主が適切にローンを組んでいなかった
    ローンを別な支払に使ってた/本人が住んでいない/賃貸に出してた
  • ローンが組みにくい物件
    金融機関からの融資が難しい物件(築年数、再建築不可、評価が低い場合)🔥

6️⃣その他の要因

  • 心理的な嫌悪感を感じる物件
    宗教施設が近くにある物件🔥🔥
    元ラブホテルなど特殊な用途で使われていた物件🔥🔥
  • 幽霊が出る物件🔥
    (過去に心霊現象が報告された物件、近隣住民が「幽霊が出る」と噂している。墓地跡、戦場跡、処刑場跡、心霊スポットとして知られる場所)

こんな感じでしょうか。この中でも売却ハードルが高いもの、低いものがあるので一概にどれも売却が苦労するという訳ではありません。

訳あり物件を売却する際の課題とリスク

訳あり物件といっても、その属性はいくつかあることがご理解いただけたかと思います。

売却の難易度は異なりますが、買い手の目に留まるようにするには、相場より安価になる傾向があります。

市場価値の低下と価格設定の難しさ

訳あり物件はどうしても普通の物件より価格が下がりがちです。事故物件・心理的瑕疵など聞くだけでちょっと不安になる人が大半でしょう。そのせいで市場価値が低く見積もられ、”どのくらいの価格なら売れるのか”設定が難しいです。高すぎると長期間売れ残り、安すぎると「やっぱりね…」って思われることも。

買い手の不安と信頼性の確保

「手頃な価格だから問い合わせてみたら訳アリだった」「訳あり物件って、なんか怖い…」と思う買い手は少なくありません。事故物件は何が起こったのか気になるのが普通の感覚です。

でも、そういった不安を解消することで、意外とスムーズに売却できることもあります。物件の状況を正直に伝えるのはもちろん、伝え方の工夫で、信頼性を高めていくのがポイントです。

法的な義務と告知事項

訳あり物件の売却において、法的な告知義務は重要です。不動産取引では過去の事故や物理的瑕疵について、買い手に対して説明することが求められます。ただし、告知内容には一定の基準があり、不要な情報を過剰に開示する必要はないので安心してください。

成功する訳あり物件の売却ステップ

1️⃣物件の現状評価と適切な価格設定

訳あり物件を売る際、まずやるべきことは「現状をしっかり把握する」ことです。この物件にはどんな訳あり要素があるのか?老朽化はどの程度進んでいるのか?

適切な価格設定も重要です。安くてもいいから早く処分したい方は売れると思いますが、少しでも高く売りたい方は適正価格で売り出すことです。

2️⃣信頼できる不動産屋の選び方

訳あり物件の売却は普通の物件とは違うので、信頼できる・慣れている不動産屋を選ぶことが売却の近道になります。

不動産屋の営業マンも人間ですので現場の状況によってはやや及び腰になる人もいるでしょう。

査定したものの安すぎて価格が付かないと放置されたり、連絡が1ヶ月も来なかったりする業者もあるので、そういった不動産屋はお断りするか、何度も催促しなければなりません。

不安なことは積極的に質問して、しっかりとサポートしてくれる業者を見つけましょう。「任せてよかった!」と思えるパートナー選びが重要です。

3️⃣効果的な販売戦略と広告方法

訳あり物件だからといって、売れないわけではありません。大事なのは「どう見せるか」。たとえば、物件の魅力を引き出す写真を撮ったり、ポジティブなポイントをしっかりアピールすることで、買い手の意欲も出るというものです。

また不動産屋経由で、投資家へのアプローチはかなり効果的です。投資家は自分が住むわけではないので利益が出れば普通に買ってくれます。

訳あり物件売却前に知っておくべき法律と規制

「訳あり物件の種類」にもよりますが、知っておいたほうがよい「決まり」がありますので、読んでおいてください。

契約不適合責任と告知義務

訳あり物件を売却する前に、避けては通れないのが「契約不適合責任」と「告知義務」です。この内容を把握しないと、せっかく売れた物件があとからトラブルになることもあります。

どのような「訳あり」かによりますが、リスクが高いので要注意なポイントです。

告知義務

重要なのが告知義務で、事故があった場合は正直に、不動産屋経由で買主に伝える必要があります

◯ 自然死や不慮の事故で死亡したケースは告知不要
✘ 自殺や事件で死亡したケースは告知要
✘ 自然死が放置された等で、特殊清掃を行ったケースは告知要

原則はこのとおりですが、自然死でも警察が検分に来た様子を近所の人が見てると後からそれが買主に伝わってトラブルになるケースもあるので、サラリと伝えておいてもいいかもしれません。

契約不適合責任

契約不適合責任というのは、物件に隠れた欠陥(契約の内容に無い事)があった場合に買い手からクレームが来たときに対応しなきゃいけない、というものです。物件の大きな欠陥が該当します。

次のような内容を契約書に落とし込めれば大丈夫です。

・把握している欠陥を開示して買主が納得した
・売主も知らなかった欠陥について後から補修しないことを買主が承諾した

不動産取引に関する法律は知らなくて良い

物件の売却を不動産屋に依頼する場合、不動産取引の法律は不動産屋が責任を負うので売主はそこまで神経質になる必要はありません。ただ情報は伝えることを心がければよいです。メリットもデメリットも両面開示して納得して刈ってもらうことが後のトラブルを防ぎます。

訳あり物件の売却に役立つサービス

訳あり物件専門の買取業者

「普通の不動産屋にお願いしても、訳あり物件はなかなか売れないんじゃ…」と不安な方には、訳あり物件に特化した業者を利用するのがオススメです。

これらの業者は、事故物件や再建築不可物件など、通常の物件より売りにくい物件を取り扱った経験が豊富です。

基本的に買取して手を加えて売却して、利益の見通しが立たなければ買取はしてくれませんが、選択肢の1つあるいは最終的な選択肢として考えておくと良いと思います。

投資家のような販売チャンネルを多数持っていることや、買い手の心理的な不安を理解しているので、スムーズに手放すことが可能です。

「ラクウル」「訳あり物件買取プロ」など、訳あり物件専門の買取サービスを提供している会社もあります。

訳あり物件を扱ったケース

地方都市の住宅街にある一軒家の売却依頼を受けて売却活動をしたことがあります。

物件自体には特に問題がなく、相場よりも安くていいから売りたいといった依頼だったのですが、残念なことに【隣の家にヤクザ関係者が出入りしていた事がある】という情報を掴みました。。

不動産屋としてはこの物件は売れるけど、なかなか買主は現れないだろうなと思いました。この手の「隣に問題あり」という物件は、心理的瑕疵として扱われることがあり、買い手の心理的抵抗が非常に強くなります。まぁ誰だってヤクザの隣家は嫌ですよね。。

実際売りに出してみると問い合わせは非常に多いものの、告知事項を伝えると内見にまで発展しません。そこでWEB掲載時点で「告知事項あり」を表示し値段を下げて出し、予め告知事項をオープンにすることで、把握してもらいそれでもOKな人だけに絞り込みました。

問い合わせ数自体は減りましたけど説明に納得いった方から購入してもらうことが出来ました。

説明の内容ですが、出入りしていたヤクザの現状はどうなっているかを調べたこと。現在空き家になっていること。近隣住民の間ではまだ噂が残っていること。治安について警察に確認しトラブル等が発生してないことを開示しました。