不動産投資で節税できる?自営業・社長・サラリーマンについて税理士に聞いた

サラリーマンとして個人の方で節税できるのか、あるいは法人のほうで節税できるのか、税理士に聞いてみました。

いろんな角度で調べた結果を記事にしています。

当然ながら私は税金のプロ(税理士)ではありませんので、どこか誤りがあるかもしれませんが、自分の備忘録としても残しています。

節税の基本的な考え方は経費を計上すること

不動産事業にかかる費用は経費(損金)として計上できます。

そうすると個人でも法人でも所得を減らすことが出来て、その結果、税金が安くなって節税することができます。

なので何が経費になるかをまずはチェックしましょう。

不動産を買うと何が経費計上できるのか

まず経費に計上できるものをチェックしました。

物件の購入代金を1年で経費にできるか?

物件を買うと土地+建物を買うことになります。(借地権ていうのもあるけど、それは建物だけを買う)

で、土地代のほうは資産になるので経費計上できません。建物部分が経費になります。

例えば1000万円の物件で土地代が600万、建物代が400万だとすると建物の400万円が経費になります。

そして残念ながら400万円が全額今年の経費にはなりません。減価償却の考え方で何年かにわけて経費計上されます。例えば耐用年数が10年なら毎年40万円が減価償却費として経費計上になります。

具体的な計算をしてみます。

中古物件の耐用年数の計算式

中古物件の耐用年数は以下の計算です。

新築時の耐用年数 ー 経過年数 + 経過年数 X 0.2 = 取得時の耐用年数

耐用年数が経過してしまってる場合は、新築時の耐用年数 X 0.2 = 取得時の耐用年数

新築鉄筋コンクリートの耐用年数は47年。よくあるRCマンションがこれ。
新築木造の耐用年数は22年。よくある戸建て木造住宅がこれ。

国税庁の耐用年数表

(計算例)
①鉄筋コンクリートマンション47年 経過年数30年の場合
47-30+30*0.2=23年

②鉄筋コンクリートマンション47年 経過年数40年の場合
47-40+40*0.2=15年

③鉄筋コンクリートマンション47年 経過年数47年の場合
=47*0.2=9.4年 ★最も古い物件でも耐用年数9.4年で計算になるということ。

④中古木造アパート 経過年数22年の場合
22*0.2=4.4年 ★木造なら4年で減価償却できる。

減価償却費の計算式

減価償却費を計算するには、国税庁に減価償却率表というのがあるので、求めた耐用年数とマッチさせて「償却率」を参考にする。

建物の購入価格 X 償却率 = マンションの毎年の減価償却費
(購入価格の建物部分 ÷ 残りの耐用年数 をすれば1年で経費になる額がざっくり出せる。)

(計算例)建物の購入価格450万円

①鉄筋コンクリートマンション47年 経過年数30年の場合

耐用年数23年
償却率0.044
購入価格×償却率=450万×0.044=19.8万円

②鉄筋コンクリートマンション47年 経過年数40年の場合

耐用年数15年
償却率0.067
購入価格×償却率=450万×0.067=30.15万円

③鉄筋コンクリートマンション47年 経過年数47年の場合

耐用年数9.4面
償却率0.112
購入価格×償却率=450万×0.112=50.4万円

これが毎年(耐用年数の期間)経費計上できる額となる。

最初の年に物件を買うためにお金を払いますので、それ以後はお金の支払は無くなりますが、帳簿上は毎年損金になります。

物件の建物部分の価格をどうやって算出するか

不動産売買サイトを見てみても物件の価格が「1000万円」と載ってるだけで土地がいくらで、建物がいくらというのは書かれていない。

いくつか建物価格を引く方法がある。

1.売買契約書に土地と建物の比率が書かれる場合がある。消費税は建物のみにかかるので消費税から建物の価格がいくらか逆算できる。→一般人同士の売買ではほとんど無いと思う。

2.課税証明書で確認ができる。これは4~5月に税務署から来る固定資産税課税通知書。

3.固定資産評価証明書で確認できる。

自分は不動産屋に問い合わせて現状どうなってるか資料をもらうことができた。「固定資産税関係証明書」というお役所の書類に記載を見ることが出来た。書類の名称は各都道府県の自治体によって異なる。たぶん3のやつだと思う。

2の課税証明は1月1日時点の所有者に送られてくるので、4月以前に購入したら売主の手元に届くし、4月以降に購入したら引き渡しの時に売主からもらって引き継ぐ形になるのが一般的か。

自分が物件を購入した後に不動産を登記するのだが、この時に司法書士と相談して土地代、建物代を自分で設定して登録できるらしい。じゃぁ土地代を限りなく安くして建物代をいっぱいにすれば経費計上できて節税になるじゃないかと考えたけど、それはダメの様子。合理的な計算で土地代、建物代を設定しないといけないとのこと。

東京は土地代が高くて土地代がほとんど。
地方は土地代が安くて建物代がほとんど。
節税を考えるには建物代で考えるのだけど、そうすると資産価値が少なくなるのでバランスを見よう。

物件のリフォームや直しにかかる修繕費、備品

物件を購入した後にリフォームや修繕、エアコン・給湯器の交換をしたとしたら、その費用は経費計上できます。

しかしすべてのケースで全額今年の経費になるのかと思ったらそうではありません。

リフォーム部分ですが、ヒビ、汚れなどの原状回復費やリフォームでしたら修繕費として一括経費となりますが、壁や柱、床などリノベーションするような固定資産の価値が高まるような修繕は資産計上となり、15年で経費となります。

ここの判断は専門家にお願いした方がよいです。

エアコンや給湯器の交換に関しても金額によって一括経費になるか耐用年数にわたって減価償却になるかは異なります。原則は10万円以上は備品で複数年で経費計上。10万円未満は消耗品で一括経費。

あとはライト、インターホン、冷蔵庫、洗濯機なども経費になりますね。

その他経費

・取得費
仲介手数料、不動産取得税、登記費用、印紙税
→購入時に係るこれら費用は残念ながら、そのタイミングでは経費にならなくなった。不動産を売却したときに取得費として経費計上できるようだ。だから購入した年に一括経費にできると思ってる人は多いけど実はできない。

・損害保険料
火災保険と地震保険に入るのでその費用。

・賃貸仲介不動産会社への費用
いわゆる管理会社への費用。
入居者募集のための広告宣伝費。

・管理費、修繕積立金
修繕積立金も今年の経費になるってのが驚き。
本来は修繕が完了した年に経費計上になるが一定の条件を満たした場合は支払った月に経費計上ができる。

参考
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/12.htm

・借入金金利(金利部分が経費)

・雑費(消耗品費、交通費、通信費)

当然ですが物件を内見に行ったりしたときの交通費とか、宿泊費とか。法人ならその時の日当手当が経費になる。
あとはパソコンを買ったりWEBで調査するためにインターネット契約をしたた通信費になるし。スマホの購入代金も経費。

・税理士の顧問料や確定申告代行費用
忘れちゃならないのが自分で確定申告するのではなくて税理士にやってもらう場合の費用。税理士代はウチは月4万円、決算月は20万円かかるので年間60万円もかかってます。

法人で不動産を購入すると節税になるのか?

以上のことを考えると「たいして節税にならない」というのが私の感想です。

もし法人で今年1000万利益が出そうだから1000万の物件を買って節税しようと思っても今年の経費になるのが50万円ぽっち。

現金で1000万円払ってマンションを買ってしまうと手元のお金がなくなってしまうのに50万しか経費にならないので、950万円が利益になっちゃって。それに課税されるのでだいたい30%とすれば300万弱の法人税が取られるわけで。

手元に現金がないのに300万弱の税金がとられるのでは逆にツラクなるじゃないか。

融資を引いて自己資金を使わないでローンで物件を買うなら手元に現金がのこるから、そこから法人税を払えばいいのでそっちの方が気が楽。

ただ2年目以降に毎年50万の出費を伴わずに経費になっていくのはウマイと思います。
けど不動産事業ですからそれ以上の家賃収入が入ってくるはずです。

その場合は役員報酬を支払って法人の損益をマイナスに持っていくような取り組みもできるけど、役員報酬にも所得税・住民税・社会保険料がかかる。

結局、不動産を買うことで節税を考えるのが間違ってたなと思いました。

不動産はやはりあくまで事業。節税に使うんじゃなくて利益出してナンボ。

法人と個人は計算が違う

個人が不動産を売却した際の「所得税」についてですが、

所得税の計算は
① 分離課税
② 譲渡所得=売却金額-取得費-譲渡費用で計算
③ 5年以内所持→所得税30%、5年超所持→所得税15%で計算

となりますが、法人の場合は他の事業との損益通算になりますので、分離課税にはなりません。

個人の場合は所有期間短期で売るより長く保有して売ったほうが得しますが、法人の場合は当てはまりませんので短期間で売却しても構わないのです。

ただ、短期間に買って売ってを繰り返すと、それは宅建業になるので宅建業免許を取らないといけない。

サラリーマンや医師の不動産投資で節税になるケース

不動産投資では、購入した物件からの家賃収入が「不動産所得」として計上されますが、同時にその物件に関連する経費(例えば、ローンの利息、修繕費、減価償却費、管理費など)も「必要経費」として計上できます。

不動産所得がマイナス(赤字)になると、この赤字をサラリーマンとしての給与所得と相殺(損益通算)することができます。

例えば物件が木造30年で耐用年数が切れていれば建物部分の減価償却が可能です。仮に建物部分が400万円だとするとこれからの4年間で毎年100万円の減価償却が発生するので損金にすることが可能です。

とはいえ「投資」なので家賃収入もあるはずで、赤字を望む(あるいは赤字でもいいやの気持ちで)取り組むのは本末転倒かもしれません。

高年収の人は法人を作って節税?

あとは高年収の人は法人を作って、法人で不動産を買うことも節税になります。

これは税率差による節税です。

個人の税率 15%~最大55%
法人の税率 26~34%

ということを考慮します。

個人での所得+不動産所得が900万円を超えると税率33%になるので、法人を作って法人で不動産を買った方が節税になるという話。

4000万円を超えると所得税で45%、住民税で10%で合計55%になります。

なので給料+不動産所得が900万円を超えてくるなら法人設立を考え始めるとよいと考えられますが、以下のようなデメリットも勘案しないといけません。

不動産会社のセミナーや税理士が教えてくれない残念なお知らせ

不動産会社のセミナーとか、税理士から教えてくれないということは無いのですが、なぜか自分から積極的にこの話をしてくれない傾向があります。結構重要なのに。

高年収のサラリーマンや医師が法人を作ってそっちで不動産事業をやっていくデメリット。

「床屋に髪を切ったほうがよいか聞くな」、というコトワザがありますが、それと一緒ですね。

・法人設立の登記ために株式会社28万、合同会社13万かかる。

・法人の確定申告はとても難しいので税理士にお願いすることになる。年間50万円ぐらい。

・法人で利益が出てると5~7年に1回税務調査が入る。この時も税理士にお願いすると20万ぐらいかかる。

・法人で利益が出ると法人の財布にお金が貯まっていくが、社長でもそのお金は自由に引き出しできない。★これが最大の問題。

【法人のお金を自分のものにする対策】

節税ばかり考えていると自分の手元に残すお金、自分が自由に使えるお金が思ったほど残らなかったりするので気を付けたい。

法人のお金を引き出すには次のパターンしかない。

①役員報酬(賞与)で受け取って個人の財布に入れる
②退職金で受け取る
③株主配当

法人を設立するということは自分が株主になることなので法人から株主配当を払えます。が法人の経費にはならない。

給与(役員報酬)で受け取るということは結局サラリーマンの給料と同じになるので所得税・住民税・社会保険料がかかる。

最後の退職金で受け取るが一番多い。退職金にかかる所得税は税率が安い(1/2して勤続年数×40万円控除後に×税率)が、ここに課題もある。退職金は直近3年間の平均的な役員報酬×勤続年数×倍率(社長は3~2、それ以外は1)が出せる。退職時まで役員報酬をそれほど取ってなかった場合は税金を支払わずに受け取れる額が少ない。

もし長く会社の内部留保を貯めてたとして、どうやってその金を個人の可処分所得にするか、これは最大の課題。

ということは法人で利益が出てる間はずっと法人にお金をプールしておいて、サラリーマンを65歳で退職したら、その後で法人から給料を取るようにするのがよいかもしれない。給料取ると所得税・住民税・社会保険料がかかるので、節税になると思ってた人は大してなってないことにここで気づく。

この課題は税理士に聞いても答えは出ない。シミュレーションも難しく無料では何パターンもやってくれないだろう。

それで自分の好きなタイミングで退職して退職金を貰う。その時誰かに社長をやってもらうかは考える必要がある。会社を解散して内部留保を全部株主配当で取る手段もあるけど、それだと普通にMAX55%の課税がされて今まで節税してきた意味がなくなる。

最後もう1つ。

④親族に役員(社員)になってもらって役員報酬(給与)を払う

例えば妻を役員にして毎月8万円を役員報酬で支払えば年収96万円。妻は扶養の中なので所得税も住民税もかからない。社会保険料も払わなくていい。

ただし勤務実態がないと税務署に認められない可能性もあるので注意しないといけない。

法人化の是非

結局のところ法人化をするのは、今後の事業拡大を見越して、の意思がなければやらないほうが良いと思う。節税目的で法人化するのはおすすめしない。

以上。