不動産の現場では、毎日のようにトラブルが転がっています。
契約直前で融資がつぶれることもあれば、境界をめぐって近隣と揉めることもある。
でも今回ご紹介するのは、その中でも 伝説級のやらかし事件。
舞台は、私が今勤めている某不動産会社。
そして主役は――会社でも有名な“ダメ営業マンA氏”。
「いや、これはさすがにやばいでしょ!」と、社内が騒然となった事件を、今日は読者のみなさんにお届けします。
一本の電話から始まった悪夢
ある日の午後。
私が電話をうけたところ、以前土地を購入したお客さんの工務店から一本の電話がかかってきました。
「市役所に行ったら、この土地に家を建てられないって言われたんですけど?」
は?(^ω^;;)
そりゃそうです、だってその土地は すでに売買契約が終わって引き渡しまで完了していた土地なのです。
2項道路の落とし穴
問題となったのは、敷地の東側に接している道路。
市役所へのヒアリングによれば――
その道路は 私道で、しかも2項道路
↓
幅員が4m未満
↓
建築するには 道路中心から2mセットバックが必要
「セットバックが必要ってことになると、買主が計画していた建物プランだと敷地が足りないんですけど」
はい\(^o^)/オワタ
寝耳に水
青天の霹靂
とは、まさにこのこと。
工務店もお客さんも大慌て。
原因は、営業マンA氏の役所調査不足&テキトーな重要事項説明。
不動産営業としては致命的な大失態。というかこの会社そういうの多いな!宅建士いるのか?!
てことで、事実確認に”私が”いってきました。
ちなみにA氏はこの時すでに退職していませんでした。ヽ(・ω・)/ズコー
役所調査開始
公図を確認。確かに土地の東側に道路がある。道路台帳を取ってみると3.2m幅。
これ市道じゃないの?
登記簿を取ると複数人の所有、ということが判明。私道。
建築指導課さんに行って相談。たしかに2項道路で私道でした。オワタね。まじで。勧告で済むかな?行政指導かな?ニヤニヤ
担当者から出された選択肢は2つ
素直にセットバックをして建築する
→ ただし有効敷地が減り、希望の建物は建てられない。
2項道路を廃止する
→ そのためには、道路の所有者全員の同意が必要。
資料を持って帰ったワタクシ。
工務店にTEL。セットバックしてくれないか打診するも。
それじゃ設計からやり直しになっちゃうから無理だよ、と。そりゃそーだ。ていうかなんで自分がやめた営業マンのチョンボの尻拭いしてんの?( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン
①ハンサムのポルナレフは突如回避するアイディアがひらめく
②仲間が来て助けに来てくれる
③かわせない。2項道路を廃止する。
③2項道路を廃止する。
――これが、さらなる地獄の始まりでした。
まさかの地権者20人
調べてみると、その私道の所有者はなんと 20人の共有名義www
名字が全然違う人たちだらけ。
しかも聞き込みして回ると、この人死んでてもう居ない。みたいなケースや、登記が終わっていないケースもあり、住所不明の人まで。
20人全員への「2項道路廃止のための」署名集め開始www
登記簿を片っ端から取得し、住民票を追いかけ、ひたすら地権者を探し出しww
地獄の署名活動
知らない家を訪ね歩き、年配の方に事情を説明。菓子折り持って。
「そんな面倒な書類にサインなんかできるか!」と怒鳴られる。
「あなた誰?」と玄関先で門前払いを食らう。
「ウソくさい、信じられない」
「きっと署名したらこっちが損をするだろう」
当然そういう反応くるだろうなーと思ってたけど、実際に言われるとキツイね。
そもそも相続人本人と連絡がつかないことも。
社内では「A氏、またやらかしたか」と噂になってました。
それでも執念の末、なんと 20人中10人の同意を取り付けることに成功。
市役所もこれをもって「2項道路廃止」を承認。マジか。全員の同意じゃなくてよかったーw
ていうか、所在不明が多くて、その分は見逃してくれたっぽい。
結果的に、買主は無事に建物を建てられるようになり、最悪の事態は回避できました。
とはいえ、この裏には何十時間もの労力と、数え切れないほどの冷や汗があったのは言うまでもなく。
むしろ、工務店さん、ひと思いに不動産業課に駆け込んでくれればよかったのに。
この事件から学んだこと
事件の原因はシンプル。
役所調査を怠ったこと
現地確認をいい加減に済ませたこと
「重要事項説明」を“適当”にしたこと
これだけ。
つまり、最初にちゃんと確認していれば、何の問題も起こらなかったわけです。
まとめ:不動産取引は確認が命!
不動産営業の仕事は、ただ物件を売るだけではありません。
「安心して暮らせる家を提供する」ことが本来の役割です。
役所調査・現地調査・登記確認。
これらをサボると、後でとんでもないツケが回ってくる。
今回の事件は、そんな当たり前のことを改めて思い知らせてくれるものでした。
あーまじでこういう問題起こるんだよな。宅建の講習会でやったもん。