(媒介契約)
第三十四条の二 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。
一 当該宅地の所在、地番その他当該宅地を特定するために必要な表示又は当該建物の所在、種類、構造その他当該建物を特定するために必要な表示
二 当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額
三 当該宅地又は建物について、依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することの許否及びこれを許す場合の他の宅地建物取引業者を明示する義務の存否に関する事項
四 当該建物が既存の建物であるときは、依頼者に対する建物状況調査(建物の構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として国土交通省令で定めるもの(第三十七条第一項第二号の二において「建物の構造耐力上主要な部分等」という。)の状況の調査であつて、経年変化その他の建物に生じる事象に関する知識及び能力を有する者として国土交通省令で定める者が実施するものをいう。第三十五条第一項第六号の二イにおいて同じ。)を実施する者のあつせんに関する事項
五 媒介契約の有効期間及び解除に関する事項
六 当該宅地又は建物の第五項に規定する指定流通機構への登録に関する事項
七 報酬に関する事項
八 その他国土交通省令・内閣府令で定める事項
2 宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。
3 依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、三月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする。
4 前項の有効期間は、依頼者の申出により、更新することができる。ただし、更新の時から三月を超えることができない。
5 宅地建物取引業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、国土交通省令で定める期間内第十五条の十 法第三十四条の二第五項の国土交通省令で定める期間は、専任媒介契約の締結の日から七日(専属専任媒介契約にあつては、五日)とする。
2 前項の期間の計算については、休業日数は算入しないものとする。に、当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項第十五条の十一 法第三十四条の二第五項の国土交通省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一 当該宅地又は建物に係る都市計画法その他の法令に基づく制限で主要なもの
二 当該専任媒介契約が宅地又は建物の交換の契約に係るものである場合にあつては、当該宅地又は建物の評価額
三 当該専任媒介契約が専属専任媒介契約である場合にあつては、その旨を、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣が指定する者(以下「指定流通機構」という。)に登録しなければならない。
6 前項の規定による登録をした宅地建物取引業者は、第五十条の六に規定する登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡さなければならない。
7 前項の宅地建物取引業者は、第五項の規定による登録に係る宅地又は建物の売買又は交換の契約が成立したときは、国土交通省令で定めるところ第十五条の十三 法第三十四条の二第七項の規定による通知は、次に掲げる事項について行うものとする。
一 登録番号
二 宅地又は建物の取引価格
三 売買又は交換の契約の成立した年月日により、遅滞なく、その旨を当該登録に係る指定流通機構に通知しなければならない。
8 媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、当該媒介契約の目的物である宅地又は建物の売買又は交換の申込みがあつたときは、遅滞なく、その旨を依頼者に報告しなければならない。
9 専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、前項に定めるもののほか、依頼者に対し、当該専任媒介契約に係る業務の処理状況を二週間に一回以上(依頼者が当該宅地建物取引業者が探索した相手方以外の者と売買又は交換の契約を締結することができない旨の特約を含む専任媒介契約にあつては、一週間に一回以上)報告しなければならない。
10 第三項から第六項まで及び前二項の規定に反する特約は、無効とする。
11 宅地建物取引業者は、第一項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、依頼者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。以下同じ。)であつて同項の規定による記名押印に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面に記名押印し、これを交付したものとみなす。
12 宅地建物取引業者は、第六項の規定による書面の引渡しに代えて、政令で定めるところにより、依頼者の承諾を得て、当該書面において証されるべき事項を電磁的方法であつて国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面を引き渡したものとみなす。
第34条の2の条文の解説
先に条文について解説し、後半でまとめて覚えやすい形に整理します。
第34条の2第1項
宅建業者は、媒介契約を締結したら遅滞なく媒介契約書を作成し交付しなければなりません。
※売買・交換の媒介の時。・・・賃貸は書類作成が不要とされています。
※宅建業者の記名押印が必要。
※交付場所については規定されていない・・・メール等もOK
①不動産売買のときの登場人物パターン1 (いわゆる両手仲介)
不動産屋が売主から物件を預かって、自社の営業により買主を見つけた場合はこうなりますね。不動産屋は売主とも買主とも媒介契約をします。
②不動産売買のときの登場人物パターン2 (いわゆる片手仲介)
不動産屋Aは売主から物件を預かって、不動産屋Bの広告で買主を見つけた場合は、こうなるイメージです。4者間で話が進んでいきます。
媒介契約書に書く内容
号 | 内容 |
---|---|
一 | 宅地を特定するための所在、地番。建物を特定するための所在、種類、構造。(物件取得希望者の場合は希望条件を記載) |
二 | 売買すべき価額または評価額。 ・よくある流れ:依頼者が売り出し希望価格を示す→宅建業者の査定や助言→調整して媒介価額を決定。 ・価格について意見を述べるときは根拠を明らかにすること。(本条2項) |
三 | 依頼者が他の不動産屋とも媒介契約を結んでよいかどうかの取り決め(つまりこの契約が一般媒介とするか専任媒介とするかの決め)。よい場合(一般媒介のとき)に、依頼者が他の不動産屋についてお知らせする義務があるかどうかの取り決め。 |
四 | 中古建物のとき、依頼者に建物状況調査(インスペクション)業者を斡旋するかどうかの有無 |
五 | 媒介契約の有効期間、解除に関する事項 |
六 | 指定流通機構への登録に関する事。(一般媒介契約でレインズ登録しない場合は登録無しと記載) |
七 | 宅建業者が受け取る報酬額、報酬受領の時期に関すること |
八 | その他国土交通省令・内閣府令で定める事項は、宅建業法施行規則の第15条の9(媒介契約の書面の記載事項) 第十五条の九 法第三十四条の二第一項第八号の国土交通省令・内閣府令で定める事項は、次に掲げるものとする。 一 専任媒介契約にあつては、依頼者が他の宅地建物取引業者の媒介又は代理によつて売買又は交換の契約を成立させたときの措置 二 依頼者が売買又は交換の媒介を依頼した宅地建物取引業者が探索した相手方以外の者と売買又は交換の契約を締結することができない旨の特約を含む専任媒介契約(次条及び第十五条の十一において「専属専任媒介契約」という。)にあつては、依頼者が当該相手方以外の者と売買又は交換の契約を締結したときの措置 三 依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを許し、かつ、他の宅地建物取引業者を明示する義務がある媒介契約にあつては、依頼者が明示していない他の宅地建物取引業者の媒介又は代理によつて売買又は交換の契約を成立させたときの措置 四 当該媒介契約が国土交通大臣が定める標準媒介契約約款に基づくものであるか否かの別に記載があります。 |
①専任媒介契約にしたのに、依頼者が他の不動産屋の媒介/代理で売買/交換を成立させた時の措置 | |
②専属専任媒介契約にしたのに、自分で取引相手を探し売買/交換の契約をしたときの措置 | |
③一般媒介契約で他の不動産屋を明示する義務を課したのに、明示せずに他の不動産屋で契約成立させたときの措置 | |
④媒介契約が国土交通大臣が定める「標準媒介契約約款」に基づくものであるか否かの別を、契約書の右上すみに表示する。標準媒介契約約款のダウンロードはこちらの中ごろ。 |
補足
この他、「解釈・運用の考え方」には依頼者に対して不動産取引の全体像や、媒介契約の業務範囲について書面(別添1参照)を交付して説明することが望ましいとされています。
宅建業者は媒介契約の種類(一般媒介、専任媒介、専属専任媒介)違いを説明し、依頼者に認識してもらって契約することとされています。
2項
物件の売却価格について意見を述べるときは根拠を明らかにすること。
3項、4項
専任媒介契約、専属専任媒介契約の期間は最大3ヶ月となります。3ヶ月より長い期間を定めても3ヶ月となります。(無効になる訳ではない)
※3ヶ月後自動更新とする契約は不可能です。
また契約満了後に依頼者からの申し出で契約更新ができます。そのときも最大3ヶ月となります。
標準媒介契約約款は文書等による申し出を更新の要件としている(標準専任媒介契約約款第15条、標準一般媒介契約約款第16条)。
5項、6項、7項 レインズへの登録
専任媒介契約を締結したとき(つまり売主から物件を預かることになったとき等)
・専任媒介契約は7日以内
・専属専任媒介契約は5日以内
に不動産流通機構(レインズ)に必要事項を登録しなければならない。この日数は不動産屋の休業日を除いて、ということなので7営業日、5営業日中に登録せよ、ということですね。一般媒介契約についてはレインズへの登録義務が無いこともわかります。任意で登録してもよい。
それから不動産屋が自ら販売する物件をレインズに登録する必要もありません。
またレインズに登録すると登録済証が出るので、遅滞なく依頼者に引き渡さなければなりません。
そして取引の相手が見つかり、契約が成立した時は、レインズに登録した案件について、成約済みの通知をする必要があります。この時の通知内容は①登録番号②成約価格③契約年月日です。
8項、9項 報告義務
購入希望者が現れて申込があった時は、遅滞なく、売主に報告しなければならない。(一般、専任、専属専任媒介契約どれでも)
どんなに希望価格より安く申込が入っても報告は必須。手段は文書、メール、口頭などで報告します。
また専任媒介契約では2週間に1回以上、専属専任媒介契約では1週間に1回以上、業務の処理状況を報告しなければなりません。(例えば、athomeに掲載しました、問い合わせが●件ありました、内覧の希望が1件ありました‥等)
10項 特約の無効
3項~9項(7項除く)の規定に反する特約は無効となります。
11項、12項 電磁的方法
ここでは、宅建業者が依頼者の承諾を得て、媒介契約書を電子的に提供することができること、そしてその電子的方法で提供された媒介契約書は物理的に交付されたと同じ効力を持つと説明しています。
例えばメール、オンライン上での交付、クラウドでの共有、オンライン契約ツール等、依頼者のPC等にファイルとして記録できる形です。
またレインズに登録した時の登録済証も電子的に提供できます。
第34条の2のまとめ
3種類の媒介契約について
3種類の媒介契約について整理しました。
① 一般媒介 |
② 専任媒介 |
③ 専属専任媒介 |
|
---|---|---|---|
売主が複数の宅建業者に媒介の依頼が | できる | できない | できない |
売主は自分で買主を見つけて当事者間契約が | できる | できる | できない |
書面作成・記名・押印 | する | する | する |
売買すべき価額 | 媒介契約書に書くこと | ||
媒介契約期間 | 自由 | 最大3ヶ月 | |
レインズ登録 | 任意 | 7営業日 | 5営業日 |
業務処理状況の報告義務 | なし | 2週に1回 | 週1回 |
申込時の報告義務 | 遅滞なく報告すること |
★契約期間
②③は契約期間が最大3ヶ月と決められる、3ヶ月後自動更新は不可能。契約満了後に売主から契約更新の依頼をすることはできる。その時は文書で行う。
①は契約期間の規制なし、自動更新の特約がも出来る
★報告義務
②③は売主への業務状況報告が必要。②は2週間に1回以上、③は週1回以上。(休業日も含む) ①はない
★不動産流通機構レインズ登録義務
②は契約日から7営業日以内、③は契約日から5営業日以内にレインズに登録する義務がある。
①は任意。
★申し込みがあった場合の報告
遅滞なく、売主に報告しなければならない。(一般, 専任,専属専任どれでも)これに反する特約を契約に盛り込んだものは無効となる。
どんなに希望価格より安く申込が入っても報告は必須。手段は文書、メール、口頭など。
レインズ
②と③はレインズに登録する。登録事項は以下。
登録後に証書が発行されるので、それを売主に渡す(依頼者が良ければメールでもよい)
その後売買契約が成立したタイミングで、遅滞なく 指定流通機構に通知しなければならない
第34条の3 代理契約
第三十四条の三 前条の規定は、宅地建物取引業者に宅地又は建物の売買又は交換の代理を依頼する契約について準用する。
この記事の上段で媒介契約について説明してきたことは、代理契約についても適用されます。