(宅地建物取引士の設置)
第三十一条の三 宅地建物取引業者は、その事務所その他国土交通省令で定める場所(以下この条及び第五十条第一項において「事務所等」という。)ごとに、事務所等の規模、業務内容等を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならない。
2 前項の場合において、宅地建物取引業者(法人である場合においては、その役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。))が宅地建物取引士であるときは、その者が自ら主として業務に従事する事務所等については、その者は、その事務所等に置かれる成年者である専任の宅地建物取引士とみなす。
3 宅地建物取引業者は、第一項の規定に抵触する事務所等を開設してはならず、既存の事務所等が同項の規定に抵触するに至つたときは、二週間以内に、同項の規定に適合させるため必要な措置を執らなければならない。
第31条の3第1項 宅建士の設置義務
宅建業者は、事務所等ごとに、成年者の専任の宅建士を置かなければなりません。
書かれてる事はこれだけなのですが、重要な部分が以下の3つあるので解説していきます。
- 「事務所その他国土交通省令で定める場所=事務所等」という表現が意味する場所はどこか
- 「国土交通省令で定める数」は何人か
- 「専任の宅地建物取引士」の定義
事務所等とはどこか?
まず1番目の事務所その他国土交通省令で定める場所=事務所等はどこかという話ですが。
「事務所」+「その他国土交通省令で定める場所」です。
事務所 → 本店、支店、継続的に業務を行う事が出来る施設を有する政令使用人を置く場所(3条1項)
その他国土交通省令で定める場所 → 宅建業法施行規則15条の5の2に以下のように書かれています。
(法第三十一条の三第一項の国土交通省令で定める場所)
第十五条の五の二 法第三十一条の三第一項の国土交通省令で定める場所は、次に掲げるもので、宅地若しくは建物の売買若しくは交換の契約(予約を含む。以下この項において同じ。)若しくは宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介の契約を締結し、又はこれらの契約の申込みを受けるものとする。
一 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外のもの
二 宅地建物取引業者が十区画以上の一団の宅地又は十戸以上の一団の建物の分譲(以下この条、第十六条の五及び第十九条第一項において「一団の宅地建物の分譲」という。)を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所
三 他の宅地建物取引業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所
四 宅地建物取引業者が業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合にあつては、これらの催しを実施する場所
1項はまた文章が入り組んでて意味がわかりにくいので、分解してみます。
・宅地建物の売買/交換の契約を結ぶこと。(予約も含む)
・宅地建物の売買/交換/貸借に関する、代理や媒介の契約を結ぶこと。(予約も含む)
・上記の契約に関する申し込みを受け取ること。(予約も含む)
これらの行為をする、次の場所が国土交通省令で定める場所です。
一 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外のもの
→事務所のように見えるけど、契約締結権限者(店長等)がいない場所です。
そして「特定」の物件の契約を受けたり、申込の受付をする土着の案内所や出張所が該当します。(宅地建物取引業法の解釈の(1)(3))
⇔不特定の物件の契約を継続的に行うような場所は事務所になっちゃうので。
二 宅建業者が一団の宅地建物の分譲を案内所を設置して行う場合の案内所
三 他の宅建業者Cが行う一団の宅地建物の分譲の、代理/媒介を宅建業者Aが案内所を設置して行う場合の案内所
四 不動産フェア、相談会、期間限定の催し、展示会場です。
これらをまとめて「契約・申込をする案内所」と覚えておくとよいと思います。
一号については、「不特定」の物件を扱う場所ではないことがわかりますし、契約締結権限を持つ者が置かれる場所は「事務所」になっちゃうので違うことがわかります。ではどうやって契約するのか気になると思いますが、契約締結を委任された人や、契約締結権限者が派遣されていることとされています。
つまり、
事務所と、契約・申込をする案内所=事務所等には、成年者で専任の宅建士を置く必要がある、ということになります。
国土交通省令で定める宅建士数は何人か
こちらも宅建業法施行規則15条の5の3に以下のように書かれています。
(法第三十一条の三第一項の国土交通省令で定める数)
第十五条の五の三 法第三十一条の三第一項の国土交通省令で定める数は、事務所にあつては当該事務所において宅地建物取引業者の業務に従事する者の数に対する同項に規定する宅地建物取引士(同条第二項の規定によりその者とみなされる者を含む。)の数の割合が五分の一以上となる数、前条に規定する場所にあつては一以上とする。
表で整理します。
場所 | 宅建士の数 |
---|---|
事務所 | 従業員5人に1人 |
契約・申込をする案内所 | 1人以上 |
事務所には5人中1人の宅建士が必要です。
また契約・申込をする案内所にあっては、宅建士が1人以上いればOKとされています。
例えば、事務所で働く人が次の5人。①社長、②営業マン(社員)、③宅建士(社員)、④営業事務(パート)、⑤事務(バイト)みたいなイメージですね。もう1名バイトを雇おうと思ったらもう1人宅建士が必要になります。ただし非常勤役員や他の事業に従事する者は含まれません。(宅建業法の運用と解釈)(1) 宅地建物取引業のみを営む者の場合について
原則として、代表者、役員(非常勤の役員を除く。)及びすべての従業員等が含まれ、受付、秘書、運転手等の業務に従事する者も対象となるが、宅地建物の取引に直接的な関係が乏しい業務に臨時的に従事する者はこれに該当しないこととする。
それから次のようなケースもあります。(過去問平成26年問28)
宅建業者Aがマンションの販売を宅建業者Bに媒介を依頼して、Bが案内所を設置して、AとBと共同で契約業務を行うようになった場合。この時はA社またはB社から専任の宅建士が1人来てればOKとなります。
「成年者である専任の宅地建物取引士」の定義
この条文のもう1つ重要なポイント「成年者である専任の宅建士」の定義を確認しておきましょう。
成年者というのは18歳以上であることです。
★ただし未成年者であっても法人の役員や宅建業者のときは成年者とみなされます。
★一方、未成年者で営業に関し成年者と同一の行為能力を有し(つまり親から許可されている)ていても、成年者にはなりません。
「専任」の解釈についても宅建業法の運用と解釈の中に記述があります。
「専任の宅地建物取引士」の専任性について「専任」とは、原則として、宅地建物取引業を営む事務所に常勤(宅地建物取引業者の通常の勤務時間を勤務することをいう。)して、専ら宅地建物取引業に従事する状態をいう。
専任の宅地建物取引士は、「常勤性」と「専任性」の二つの要件を充たさなければなりません。
常勤するとは、宅建士が当該事務所等に常時勤務すること、若しくは常時勤務することができる状態にあることをいいます。
専任性とは、宅建士が専ら当該事務所等の宅地建物取引業務に従事する、若しくは従事することができる状態であることが必要です。
※常勤性が認められない例
・非常勤やパートタイマー:事務所の特定の時間帯だけ働く。
・他の仕事を持つ者:他の勤務先があって、そこからの帰宅後や休日にだけ働く。
・大学生:学業と並行して働く在学中の大学生。
・遠距離に住む者:事務所から非常に遠く、通常の通勤距離を超える場所に住んでいるため、勤務や通勤に影響がある。
・別の企業に勤務する者:宅建業者以外の異なる企業で働いている。
※専従性が認められない例
・他の法人の代表や取締役:別の法人の代表取締役や取締役(常勤)として勤めている。
・他の従事者:他の法人や宅建業者で働いている。
・他の専任業務に従事している者:専任性を要する他の業務に従事している。
・監査役:当該法人の監査役として就任している。
第31条の3第2項 代表や法人の役員が宅建士
2項について改めて引用します。
2 前項の場合において、宅地建物取引業者(法人である場合においては、その役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。))が宅地建物取引士であるときは、その者が自ら主として業務に従事する事務所等については、その者は、その事務所等に置かれる成年者である専任の宅地建物取引士とみなす。
個人の宅建業者、法人の役員が宅建士であるときは、その者は成年者である専任の宅建士とみなされます。
第31条の3第3項 宅建士が不足したら?
3項も改めて引用します。
3 宅地建物取引業者は、第一項の規定に抵触する事務所等を開設してはならず、既存の事務所等が同項の規定に抵触するに至つたときは、二週間以内に、同項の規定に適合させるため必要な措置を執らなければならない。
もし宅建士の人が会社を辞めて、規定の数を満たさなくなったら、2週間以内に新たに宅建士を見つけてこないといけません。