宅建業者の割賦販売のときに、買主が代金を払うまでは所有権を渡さない=所有権留保 についての条文です。

(所有権留保等の禁止)
第四十三条 宅地建物取引業者は、みずから売主として宅地又は建物の割賦販売を行なつた場合には、当該割賦販売に係る宅地又は建物を買主に引き渡すまで(当該宅地又は建物を引き渡すまでに代金の額の十分の三をこえる額の金銭の支払を受けていない場合にあつては、代金の額の十分の三をこえる額の金銭の支払を受けるまで)に、登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければならない。ただし、買主が、当該宅地又は建物につき所有権の登記をした後の代金債務について、これを担保するための抵当権若しくは不動産売買の先取特権の登記を申請し、又はこれを保証する保証人を立てる見込みがないときは、この限りでない。
2 宅地建物取引業者は、みずから売主として宅地又は建物の割賦販売を行なつた場合において、当該割賦販売に係る宅地又は建物を買主に引き渡し、かつ、代金の額の十分の三をこえる額の金銭の支払を受けた後は、担保の目的で当該宅地又は建物を譲り受けてはならない。
3 宅地建物取引業者は、みずから売主として宅地又は建物の売買を行なつた場合において、代金の全部又は一部に充てるための買主の金銭の借入れで、当該宅地又は建物の引渡し後一年以上の期間にわたり、かつ、二回以上に分割して返還することを条件とするものに係る債務を保証したときは、当該宅地又は建物を買主に引き渡すまで(当該宅地又は建物を引き渡すまでに受領した代金の額から当該保証に係る債務で当該宅地又は建物を引き渡すまでに弁済されていないものの額を控除した額が代金の額の十分の三をこえていない場合にあつては、受領した代金の額から当該保証に係る債務で弁済されていないものの額を控除した額が代金の額の十分の三をこえるまで)に、登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければならない。ただし、宅地建物取引業者が当該保証債務を履行した場合に取得する求償権及び当該宅地又は建物につき買主が所有権の登記をした後の代金債権について、買主が、これを担保するための抵当権若しくは不動産売買の先取特権の登記を申請し、又はこれを保証する保証人を立てる見込みがないときは、この限りでない。
4 宅地建物取引業者は、みずから売主として宅地又は建物の売買を行なつた場合において、当該宅地又は建物の代金の全部又は一部に充てるための買主の金銭の借入れで、当該宅地又は建物の引渡し後一年以上の期間にわたり、かつ、二回以上に分割して返還することを条件とするものに係る債務を保証したときは、当該売買に係る宅地又は建物を買主に引き渡し、かつ、受領した代金の額から当該保証に係る債務で弁済されていないものの額を控除した額が代金の額の十分の三をこえる額の金銭の支払を受けた後は、担保の目的で当該宅地又は建物を譲り受けてはならない。

43条第1項

宅建業者(売主)が、割賦販売を行った場合、買主に引き渡すまでに登記や引き渡し以外の、売主の義務を履行しなければなりません。

(以下の場合は、所有権留保がみとめられる)
①代金の30%超の支払を受けていない時
②所有権を登記した後の代金債務について担保するための、抵当権・先取特権の登記申請の見込みがない、保証人を立てる見込みがない時

43条第2項

宅建業者(売主)が、割賦販売を行った場合、物件の引渡しを行い、代金の3/10超を受けた後は、担保目的で物件を譲り受けてはならない。(つまり所有権を宅建業者に戻してはならない)

もし不動産会社が、物件の引き渡し後もその所有権を手放さずに留保している場合、会社が倒産するなどした時に、買主が非常に大きなリスクを負うことになります。このような状況を避け、一般の消費者である買主を保護するために、宅地建物取引業法では所有権の留保を禁止しているという規定が設けられています。

43条第3項

この部分は難解なので図と段階的な解説をしていきます。

①取引の状況
– 宅地建物取引業者が自ら売主として宅地や建物の売買を行った場合の規定です。

②買主の金銭借入れの保証
– 買主が不動産の代金を借入れで賄う場合、宅建業者がその借入れに関して保証を行うことがあります。
– この保証は、物件の引き渡し後1年以上の期間を返済期間とし、2回以上に分割して返済する条件の借入れに限られます。

③業者の義務(引渡しまでの条件)
– 業者は物件を買主に引き渡すまでの間、登記や引き渡し以外の、売主の義務を履行しなければなりません。
– 受領した代金から未弁済の保証債務を差し引いた金額が、代金の3割を超えていない場合には、その限りではありません(つまり、3割を超えるまで所有権を留保していて良い)。

④ただしの例外条件
– 業者が保証債務を履行した後に取得する求償権(買主から回収する権利)や、買主が所有権登記をした後の代金債権(売買代金の請求権)について、買主が担保登記や保証人を設ける見込みがない場合は、上記の引渡しまでの義務は適用されません。

43条第4項

上記の4項の条件(物件引渡しと代金の30%超の受領)を満たした後、宅建業者はその物件を担保の目的で再び譲り受けてはならないと規定されています。これは、買主がローンを返済できない場合に業者が再び物件を手に入れることを防ぐためです。

買主がローンを利用して不動産を購入する場合、業者がその借入れを保証することで取引を促進しますが、その後の業者の行動に制限を加えることで、買主の保護を図っていると言えますし、業者が容易に物件を取り戻せないようにすることで、買主の居住権を保護します。