宅建業者が受け取ることができる報酬額についての規定です。

(報酬)
第四十六条 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
2 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。
3 国土交通大臣は、第一項の報酬の額を定めたときは、これを告示しなければならない。
4 宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、第一項の規定により国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない。

不動産の 「売買・交換・賃貸」 × 「代理・媒介」 の報酬の額についてです。

国土交通省が公開している宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額をチェックしていきましょう。(このページの中頃)

消費税にいついての整理

まず消費税について整理しておきます。

一般的な話

土地・・土地の売買代金や借賃については消費税はかかりません。土地というものは消費されるものではないからです。

建物・・建物の売買には消費税がかかります。賃貸住宅の家賃に関しては消費税はかかりません。(例えばアパートや戸建1ヶ月の家賃5万円には消費税は含まれてません)
しかし居住用以外の建物の借賃には消費税がかかります。テナントの家賃月30万円には消費税10%なら3万円がかかります。

住宅(土地+建物)の売買では、例えば価格は税込2100万などと記載されます。土地1000万円、建物1100万円(税込)といった具合で金額が明記される場合もあるし、されない場合もあります。

一般的には市が評価した固定資産税評価額で按分するように思います。固定資産税評価額が土地500万円・建物250万円だったとしたら土地と建物の比率は2:1です。売主買主で妥結した売買代金も土地と建物の価格比率は2:1になるイメージです。

宅建業者の話

宅建業者が売主や買主から受け取る仲介手数料についてですが、消費税は課税です。

事業者については①消費税課税業者と、②免税業者というのがあります。年間の売上が1000万円以上の業者や、インボイス登録した業者は①に当たります。

①については仲介手数料に10%の消費税を上乗せして受け取ることができます。
②については4%を上乗せすることができます。(広告費を払う際に消費税払ってるはずなので、仕入れにかかる消費税相当額として)

詳細は「宅建業法の運用と解釈」の消費税の免税事業者の仕入れに係る消費税の円滑かつ適正な転嫁について、をご覧ください。

以上の前提で各種手数料についてみていきましょう。

売買・交換の媒介

片手の報酬限度額の簡単な計算式です。これで一発で出ます。

代金額(物件の税抜き価格) 報酬の限度額
200万円以下 5%
200万円超~400万円以下 4%+2万円
400万円超 3%+6万円

この表で計算できます。例えば2000万円の売買契約をしたとき、3%+6万円なので、66万円が貰えます。両手(売主と買主どちらとも)の場合は66万x2=132万円。消費税10%を加えれば145.2万円です。

★交換の場合は評価額が高い方に掛け算します。
1000万の土地⇔1200万の土地・・・1200万×3%+6万

計算ツールを用意しました。参考にしてください。

計算ツール

土地+建物価格: 0円
報酬額(小数点以下まで): 0円
報酬額(小数点以下切り捨て): 0円
消費税込み報酬額(小数点以下まで): 0円
消費税込み報酬額(小数点以下切り捨て): 0円

原則の計算式との比較

原則の計算式も置いておきます。原則は200万以下の部分に5.5%を乗算、200~400万以下の部分に4.4%を乗算、400万超の部分に3.3%を乗算して全部足すやり方です。(宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額)

売買・交換の代理

代理の場合は、売買仲介の時の報酬額(基本報酬と呼ぶことにします)の2倍が限度額となります。

ただし売買契約からもらえる報酬額の上限は基本報酬の2倍までです。(下図参照)

もし売主代理で基本x2の報酬を貰ったら、買主からは報酬は貰えません。
もし売主代理で4%+6万円の報酬を貰ったら、買主からは2%+6万円が上限になるイメージですね。

※両手代理はできません(双方代理の禁止)

【片手の場合:不動産屋が2社関係する場合】

不動産屋A(代理)が、この取引の報酬額上限(6%+12万)を貰う契約になってた場合、不動産屋B(媒介)は買主から媒介報酬をもらうことが出来なくなっちゃう

したがって、実務としては不動産屋Aは不動産屋Bに対し、貰える報酬を事前に伝えることが必要になる。

貸借の媒介

貸主&借主から受け取れる報酬の合計限度額は、1ヶ月分の借賃×1.1倍(消費税含む)となります。

貸主、借主からどういった割合で手数料を貰うかは規定がありません。この1ヶ月x1.1の範囲内で設定することになりますし、一方からのみ手数料を貰う事でも構いません。

(1)専ら居住用建物の場合

依頼者の承諾を得ていない場合、依頼者の一方から受け取れる報酬額は 1/2ヶ月分×1.1が上限です。

媒介契約までに依頼者の承諾を得ていれば一方から1ヶ月x1.1の手数料を貰える。

※「専ら居住の用」なので、店舗兼住宅は当てはまらないです。

(2)宅地や事業用店舗の場合(店舗兼住宅も)

宅地や事業用店舗の賃貸の場合は、承諾を得ていなくても1ヶ月分x1.1の手数料を貰えます。

(農地や駐車場には適用されません)

(3)管理費や駐車場のケース

家賃4万円(管理費なし) → 家賃4万円に対して媒介報酬1ヶ月分x1.1で44000円が上限。

家賃4万円(管理費こみ) → 管理費を引いて純粋な家賃を出してから、計算しないといけない ★実務で重要

家賃4万円、駐車場を使う場合は5000円プラス → 家賃4万円に対して44000円の仲介手数料

貸借の代理

※代理だからといって売買仲介のように2倍もらえないことに注意

宅建業者が依頼者双方から受け取れる報酬限度額合計は 1ヶ月分の借賃+消費税相当額

居住用以外の賃貸で権利金の授受がある場合の特例

権利金とは・・・権利設定の対価として支払われる金銭で、返還されないもの。のことです。
→敷金、保証金、礼金ではない。
→権利金は土地や事業用建物の賃貸借のときに設定されることがあります。(athomeやSUUMOでテナントの賃貸物件を見ると権利金が設定されてるものが見つかるでしょう。)

権利金を売買代金とみなして手数料計算をすることが出来る

居住用建物以外の物件(土地か事業用建物)の賃貸借

権利金の設定がある場合

例えば‥以下の状況だとすると

宅建業者の手数料は、2パターン計算します。

①通常の賃貸の計算・・・税抜き賃料30万円x1.1=33万円
↑貸主&借主から受け取れる合計報酬の計算

②権利金を売買代金とみなすと・・・売買媒介の時の計算を適用
440 x 3% + 6万 = 19万2千円 → x1.1 = 211,200円
↑片手の報酬なので
両手売買だとすると、貸主から211,200円 + 借主から211,200円もらえる
つまり貸主&借主から合計422,400円

①と②で高い方 → 422,400円 が受け取れる上限となります。

低廉な空家等の売買又は交換の媒介・代理における特例

物件の価格が安すぎて不動産屋が取引をやりたがらない事例が散見されるため、少し多めに貰っていいよ、という特例が出来ました。

まず条件を整理します。

低廉な空き家→宅地建物で税別400万円以下である物件のことです。(空き家等と言ってるけど空き家である必要はありません)(交換のときは多い方の価額が400万円以下)

売買・交換の媒介・代理のときに適用→賃貸は含まれません

③通常の売買・交換の媒介と比較して現地調査等の費用を要するものであること

④売主・交換を行うものである依頼者から受ける報酬であること(買主や交換の相手から受ける報酬ではありません

⑤あらかじめ報酬額について空家等の売主又は交換を行う者である依頼者に対して説明し、両者間で合意する必要がある

この時、報酬額は18万円まで貰う事ができます。消費税x1.1をすれば、198,000円までOKということです。これは売買価格400万円だったときと同等のめいっぱいの手数料と同じだけ貰えるということですね。

(事例)土地建物で税別200万円の物件の場合

①売主からの報酬限度額
通常の売買の手数料計算式:200万× 5%=10万円
人件費含む現地調査等の費用:5万円
合計15万円(18万以下なのでOK)

②買主からの報酬限度額
通常の売買の手数料計算式:200万× 5%=10万円

低廉な空き家の売主の「代理」の場合

基本報酬額×2倍とやるとおかしくなるので、正しくは以下のように計算します。

①通常の媒介報酬限度額

②低廉な空き家の特例の報酬限度額(18万円上限)

(事例)土地建物で税別300万円の物件の場合

①通常の媒介報酬限度額:300万 x 4% + 2万円 = 14万円
②低廉な空き家の特例の報酬限度額:18万円

①+②=32万円。消費税x1.1をすれば、352,000円です。

これが売主買主から貰えるMAX金額です。

・両手仲介の場合、売主から18万円+消費税を貰って、買主から14万円+消費税を貰うことはできます。
・売主から352,000円を貰う場合は、買主からは貰えません。

規定によらない報酬の受領の禁止

宅建業者は、土地建物の売買・交換・賃貸に関して、これまでの規定によらない報酬を受ける事は出来ません。

例えば
・売主の物件の査定をするだけで報酬を貰うといったことは出来ない
・買主のローンを斡旋したことによる、ローン斡旋手数料などの名目での手数料を貰う事はできない
・依頼者の依頼が無い広告の費用を受け取ることはできない
ということです。

例外として、以下の2つは別途受け取ることが認められています。

①依頼者から依頼されて行う広告の料金に相当する額
②依頼者からの特別の依頼により行う特別な費用(遠隔地での現地調査費用、空家の特別な調査費用)で、事前に依頼者の承諾があるもの

ここまでが47条1項の解説です。

47条の2項、3項、4項

2、3、4項は以下のようになっています。特段解説が必要そうな部分は無いかなと思いました。

2 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。

3 国土交通大臣は、第一項の報酬の額を定めたときは、これを告示しなければならない。

4 宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、第一項の規定により国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない。

4番は標識とあわせてプレートが販売されてるので、それを買ってる業者が多いように思います。