(事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等)
第三十七条の二 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主(事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
一 買受けの申込みをした者又は買主(以下この条において「申込者等」という。)が、国土交通省令・内閣府令の定めるところにより、申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して八日を経過したとき。
二 申込者等が、当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つたとき。
2 申込みの撤回等は、申込者等が前項前段の書面を発した時に、その効力を生ずる。
3 申込みの撤回等が行われた場合においては、宅地建物取引業者は、申込者等に対し、速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければならない。
4 前三項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。

この条文ではいわゆる宅建業者が売主の時に、買主が契約をナシにする権利である「クーリングオフ」について規定しています。

クーリングオフ出来ない「事務所等」と、クーリングオフできる「事務所等以外の場所」

買主は「事務所等」で買受けまたは売買契約締結するとクーリングオフできません。逆に冷静な判断がしにくい「事務所等以外の場所」での申込みだったらクーリングオフできる、ということですね。

では「事務所等」とはどこなのでしょうか?
まず重要な以下の文について把握する必要があります。

>当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)

宅建業法では「事務所」と「事務所等」を明確に使い分けしているので、どっちに適用されるか理解しておく必要があります。宅建業法施行規則の16条の5に以下のように書かれています。

第十六条の五 法第三十七条の二第一項の国土交通省令・内閣府令で定める場所は、次に掲げるものとする。
一 次に掲げる場所のうち、法第三十一条の三第一項第三十一条の三 宅地建物取引業者は、その事務所その他国土交通省令で定める場所(以下この条及び第五十条第一項において「事務所等」という。)ごとに、事務所等の規模、業務内容等を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならない。の規定により同項に規定する宅地建物取引士を置くべきもの
イ 当該宅地建物取引業者の事務所以外の場所で継続的に業務を行うことができる施設を有するもの
ロ 当該宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲を案内所(土地に定着する建物内に設けられるものに限る。ニにおいて同じ。)を設置して行う場合にあつては、その案内所
ハ 当該宅地建物取引業者が他の宅地建物取引業者に対し、宅地又は建物の売却について代理又は媒介の依頼をした場合にあつては、代理又は媒介の依頼を受けた他の宅地建物取引業者の事務所又は事務所以外の場所で継続的に業務を行うことができる施設を有するもの
ニ 当該宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介の依頼をし、かつ、依頼を受けた宅地建物取引業者がその代理又は媒介を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所
ホ 当該宅地建物取引業者(当該宅地建物取引業者が他の宅地建物取引業者に対し、宅地又は建物の売却について代理又は媒介の依頼をした場合にあつては、代理又は媒介の依頼を受けた他の宅地建物取引業者を含む。)が法第三十一条の三第一項の規定により同項に規定する宅地建物取引士を置くべき場所(土地に定着する建物内のものに限る。)で宅地又は建物の売買契約に関する説明をした後、当該宅地又は建物に関し展示会その他これに類する催しを土地に定着する建物内において実施する場合にあつては、これらの催しを実施する場所
二 当該宅地建物取引業者の相手方がその自宅又は勤務する場所において宅地又は建物の売買契約に関する説明を受ける旨を申し出た場合にあつては、その相手方の自宅又は勤務する場所

クーリングオフできない事務所「等」とは

・規則1項
「事務所等」の「等」とは1項を見ると以下の場所で、「専任の宅建士を置くべき場所=契約締結等を行なう場所」である、ということです。

イ‥継続的に業務を行う事が出来る施設
ロ‥土地に定着する案内所(一団の宅地建物の分譲の案内を行う)
ハ‥売主宅建業者Aが、宅建業者Bに代理・媒介を依頼したときの、宅建業者Bの事務所または継続的に業務を行う事が出来る施設
ニ‥代理・媒介を引き受けた宅建業者Bが設置する土地に定着する案内所(売主宅建業者Aが、一団の宅地建物の分譲の代理・媒介を依頼したケース)
ホ‥土地に定着する事務所等で宅地建物の媒介契約に関する説明後、展示会その他の催しをする場所

・規則2項
買主の申し出による、買主の自宅または勤務地としています。

そして37条の2に戻っていきますと、事務所等以外での申し込みは書面によりクーリングオフ出来るとしています。(現状は書面が必要で、メールだけでクーリングオフは出来ません)

「喫茶店」や「テント張りの案内所」のような冷静に判断できないような場所での申込みはクーリングオフ出来ることになりますね。

そして宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができません

クーリングオフ出来る→クーリングオフ出来なくなる時

例え事務所等以外で申込みや契約締結し、買主がクーリングオフできるとしても、買主がクーリングオフ出来なくなる場合が1項の1号と2号に書かれているので、それを説明します。

一 買受けの申込みをした者又は買主(以下この条において「申込者等」という。)が、国土交通省令・内閣府令の定めるところ第十六条の六 法第三十七条の二第一項第一号の規定により申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げるときは、次に掲げる事項を記載した書面を交付して告げなければならない。
一 買受けの申込みをした者又は買主の氏名(法人にあつては、その商号又は名称)及び住所
二 売主である宅地建物取引業者の商号又は名称及び住所並びに免許証番号
三 告げられた日から起算して八日を経過する日までの間は、宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つた場合を除き、書面により買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除を行うことができること。
四 前号の買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除があつたときは、宅地建物取引業者は、その買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができないこと。
五 第三号の買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除は、買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除を行う旨を記載した書面を発した時に、その効力を生ずること。
六 第三号の買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除があつた場合において、その買受けの申込み又は売買契約の締結に際し手付金その他の金銭が支払われているときは、宅地建物取引業者は、遅滞なく、その全額を返還すること。
により、申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して八日を経過したとき。
二 申込者等が、当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つたとき。

クーリングオフ出来なくなる時

一 宅建業者からクーリングオフできる旨を「書面」で告げられた日から8日経過した時点。(つまり翌週の同じ曜日まではクーリングオフできる)

二 買主が 「宅地建物の引き渡しを受け」 & 「代金の全額を支払った」 場合

この2つのようになると、もうクーリングオフは出来ません。

第2、3、4項

では残りの第2,3,4項について説明していきます。

2 申込みの撤回等は、申込者等が前項前段の書面を発した時に、その効力を生ずる。
3 申込みの撤回等が行われた場合においては、宅地建物取引業者は、申込者等に対し、速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければならない。
4 前三項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。

第2項 クーリングオフは買主が書面を発した時に効果が生じる、としています。書面が到着した日ではないことに注意です。

第3項 宅建業者の売主は「手付金」や「代金」をすべて返さなければなりません。

第4項 1項~3項の規定に反する特約で、買主に不利なものは無効となります。(買主に有利な特約は有効)

申込場所と、契約締結の場所が異なる場合

申込をした後に、契約締結をするとして、その「申し込みの場所」と「契約の場所」が異なる場合があります。その時は場所をどう判断するか、という話です。

→これは申し込みの場所で判断します。以下の表で整理。

申し込みの場所 契約の場所 クーリングオフ
事務所 喫茶店 できない
喫茶店 事務所 できる

わかりやすくまとめ

試験対策としては以下の解像度ぐらいのまとめてよいかと思います。

クーリングオフの告知書面に書く内容

宅建業者はクーリングオフについて告知する書面に何を書かなければいけないかが、「宅地建物取引業法施行規則 16条の六」に書かれています。

宅地建物取引業法施行規則 16条の六

一 買受けの申込みをした者又は買主の氏名(法人にあつては、その商号又は名称)及び住所
二 売主である宅地建物取引業者の商号又は名称及び住所並びに免許証番号
三 告げられた日から起算して八日を経過する日までの間は、宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つた場合を除き、書面により買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除を行うことができること。
四 前号の買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除があつたときは、宅地建物取引業者は、その買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができないこと
五 第三号の買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除は、買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除を行う旨を記載した書面を発した時に、その効力を生ずること
六 第三号の買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除があつた場合において、その買受けの申込み又は売買契約の締結に際し手付金その他の金銭が支払われているときは、宅地建物取引業者は、遅滞なく、その全額を返還すること

申込みとは何か?

買主は物件を気に入ったら、「買付証明書」を不動産屋経由で売主に提出して、問題なければ後日、売主と買主で契約締結する流れとなります。

ところで「申込み」とは「買付証明書」のことではないと解されています。