保証協会の弁済業務の全体像から詳細について図を用いて解説していきます。先に条文の全てを記載し、後半で解説となります。

(弁済業務保証金の供託)
第六十四条の七 宅地建物取引業保証協会は、第六十四条の九第一項又は第二項の規定により弁済業務保証金分担金の納付を受けたときは、その日から一週間以内に、その納付を受けた額に相当する額の弁済業務保証金を供託しなければならない。
2 弁済業務保証金の供託は、法務大臣及び国土交通大臣の定める供託所にしなければならない。
3 第二十五条第三項及び第四項の規定は、第一項の規定により供託する場合に準用する。この場合において、同条第四項中「その旨をその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に」とあるのは、「当該供託に係る社員である宅地建物取引業者が免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に当該社員に係る供託をした旨を」と読み替えるものとする。

(弁済業務保証金の還付等)
第六十四条の八 宅地建物取引業保証協会の社員と宅地建物取引業に関し取引をした者(社員とその者が社員となる前に宅地建物取引業に関し取引をした者を含み、宅地建物取引業者に該当する者を除く。)は、その取引により生じた債権に関し、当該社員が社員でないとしたならばその者が供託すべき第二十五条第二項の政令で定める営業保証金の額に相当する額の範囲内(当該社員について、既に次項の規定により認証した額があるときはその額を控除し、第六十四条の十第二項の規定により納付を受けた還付充当金があるときはその額を加えた額の範囲内)において、当該宅地建物取引業保証協会が供託した弁済業務保証金について、当該宅地建物取引業保証協会について国土交通大臣の指定する弁済業務開始日以後、弁済を受ける権利を有する。
2 前項の権利を有する者がその権利を実行しようとするときは、同項の規定により弁済を受けることができる額について当該宅地建物取引業保証協会の認証を受けなければならない。
3 宅地建物取引業保証協会は、第一項の権利の実行があつた場合においては、法務省令・国土交通省令で定める日から二週間以内に、その権利の実行により還付された弁済業務保証金の額に相当する額の弁済業務保証金を供託しなければならない。
4 前条第三項の規定は、前項の規定により供託する場合に準用する。
5 第一項の権利の実行に関し必要な事項は法務省令・国土交通省令で、第二項の認証に関し必要な事項は国土交通省令で定める。

(弁済業務保証金分担金の納付等)
第六十四条の九 次の各号に掲げる者は、当該各号に掲げる日までに、弁済業務保証金に充てるため、主たる事務所及びその他の事務所ごとに政令で定める額(弁済業務保証金分担金の額)
第七条 法第六十四条の九第一項に規定する弁済業務保証金分担金の額は、主たる事務所につき六十万円、その他の事務所につき事務所ごとに三十万円の割合による金額の合計額とする。
の弁済業務保証金分担金を当該宅地建物取引業保証協会に納付しなければならない。
一 宅地建物取引業者で宅地建物取引業保証協会に加入しようとする者 その加入しようとする日
二 第六十四条の二第一項の規定による指定の日にその指定を受けた宅地建物取引業保証協会の社員である者 前条第一項の規定により国土交通大臣の指定する弁済業務開始日の一月前の日
2 宅地建物取引業保証協会の社員は、前項の規定による弁済業務保証金分担金を納付した後に、新たに事務所を設置したとき(第七条第一項各号の一に該当する場合において事務所の増設があつたときを含むものとする。)は、その日から二週間以内に、同項の政令で定める額の弁済業務保証金分担金を当該宅地建物取引業保証協会に納付しなければならない。
3 宅地建物取引業保証協会の社員は、第一項第二号に規定する期日までに、又は前項に規定する期間内に、これらの規定による弁済業務保証金分担金を納付しないときは、その地位を失う。
4 第一項の規定に基づき政令を制定し、又は改廃する場合においては、その政令で、弁済業務保証金の追加の供託及び弁済業務保証金分担金の追加納付又は弁済業務保証金の取戻し及び弁済業務保証金分担金の返還に関して、所要の経過措置(経過措置に関し監督上必要な措置を含む。)を定めることができる。

(還付充当金の納付等)
第六十四条の十 宅地建物取引業保証協会は、第六十四条の八第一項の権利の実行により弁済業務保証金の還付があつたときは、当該還付に係る社員又は社員であつた者に対し、当該還付額に相当する額の還付充当金を宅地建物取引業保証協会に納付すべきことを通知しなければならない。
2 前項の通知を受けた社員又は社員であつた者は、その通知を受けた日から二週間以内に、その通知された額の還付充当金を当該宅地建物取引業保証協会に納付しなければならない。
3 宅地建物取引業保証協会の社員は、前項に規定する期間内に第一項の還付充当金を納付しないときは、その地位を失う。

(営業保証金の供託の免除)
第六十四条の十三 宅地建物取引業保証協会の社員は、第六十四条の八第一項の規定により国土交通大臣の指定する弁済業務開始日以後においては、宅地建物取引業者が供託すべき営業保証金を供託することを要しない。

宅建業者が開業するときの義務

説明をわかりやすくするためにまずは図を示します。

この図は、「宅建業者」と「保証協会」と「供託所」の関係を表しています。

第25条「営業保証金の供託」でやっていますが、宅建業者は業務開始前に営業保証金1000万円(支店は500万円)を供託しなければいけないルールがありました。

最初に1000万円もの大金を供託出来ない業者は、保証協会の社員になれば少しの金額で開業することができます

それは以下に書かれています。

(営業保証金の供託の免除)
第六十四条の十三 宅地建物取引業保証協会の社員は、第六十四条の八第一項の規定により国土交通大臣の指定する弁済業務開始日以後においては、宅地建物取引業者が供託すべき営業保証金を供託することを要しない。

保証協会に加入しない場合と、加入した場合との違いを表で整理しておきます。

保証協会入らない 入る
金額 営業保証金
(本店1000万円、1支店ごと500万円)
弁済業務保証金分担金
(本店60万円、1支店ごと30万円)(他にも費用有)
タイミング 免許取得後に供託
(写しを免許権者に届出)
加入の日までに納付(入会審査あり)
保証協会から供託所に供託
保証協会から免許権者に届出
供託または納付先 最寄りの供託所(法務局等) 保証協会

さっきの図をもう1度。

まず似てるようで違う用語の解説。(ここ明確にしておかないと試験問題で出た時どっちのことを言ってるのかわからなくなる)

弁済業務保証金分担金・・・宅建業者→保証協会に支払う金
弁済業務保証金・・・保証協会→供託所に支払う金

宅建業者が保証協会に納付する流れ

宅建業者は「弁済業務保証金」に充てるため、本店は60万円・支店は30万円の「弁済業務保証金分担金」(弁済業務保証金分担金の額)
第七条 法第六十四条の九第一項に規定する弁済業務保証金分担金の額は、主たる事務所につき六十万円、その他の事務所につき事務所ごとに三十万円の割合による金額の合計額とする。
を保証協会に納付
しなければなりません。(第64条の9第1項)
①新たに加入する業者は、加入しようとする日までに
②すでに社員である業者が、新たに事務所を設置したときは、設置した日から2週間以内に(第64条の9第2項)

社員は期日までに弁済業務保証金分担金を保証協会に納付しない時は、その地位を失います。(第64条の9第3項)(ただこの時点では宅建業の免許までは失いません。)

保証協会の弁済業務保証金の供託

保証協会側の動きについてですが、また図を見ながら確認していきましょう。

①保証協会は社員から弁済業務保証金分担金の納付を受けたときは、その日から1週間以内に、受けた金額と同額を弁済業務保証金として供託しなければなりません。(第64条の7第1項)

②弁済業務保証金の供託は、法務大臣および国土交通大臣の定める供託所に行います。(第64条の7第2項)

③保証協会から供託所への弁済業務保証金の供託は、国際証券、地方債証券、有価証券を使う事が出来る。(第64条の7第3項)

④保証協会が社員から弁済業務保証金分担金の納付を受けたときは、社員の免許権者に、供託書の写しを添付して届出なければいけません。(第64条の7第3項)

客が損害を受けたとき①

保証協会の業務の1つである「弁済業務」に関する話題に入っていきます。(第64条の8)
やはり図で記憶していきましょう。

お客さんは宅建業者と宅建業に関し取引をして損害を受けた時、弁済を受ける権利があります。金額は営業保証金の額に相当する額の範囲内です。(宅建業法(第25条)営業保証金

対象となるお客さん:保証協会の社員と取引をした者。宅建業者が保証協会に加入する前に取引があったお客さんも対象となる。

弁済を受ける金額営業保証金に相当する額の範囲内(本店につき1000万円、支店につき500万円)です。
例えば本店1つと支店2つを運営する宅建業者だった場合は、1000万+500万×2=合計2000万円までの範囲で弁済を受ける権利を有します。

お客さんの手順:保証協会の「認証」(認証の申出)
第二十六条の五 法第六十四条の八第二項の規定により宅地建物取引業保証協会の認証を受けようとする者は、その者と取引をした社員が属する宅地建物取引業保証協会に別記様式第二十一号による認証申出書を三通提出しなければならない。
2 前項の認証申出書には、次の各号に掲げる書類を添附しなければならない。
一 債権発生の原因である事実、取引が成立した時期、債権の額及び認証を申し出るに至つた経緯を記載した書面
二 法第六十四条の八第一項の権利を有することを証する書面
三 認証の申出人が法人である場合においては、その代表者の資格を証する書面
四 代理人によつて認証の申出をしようとするときは、代理人の権限を証する書面
を受ける必要があります。保証協会から認証が出ればOKで、その後客から還付請求を供託所に対して行う事により、還付されます。

※認証とは:保証協会が弁済業務保証金の還付を受ける権利の存在及びその額を確認して証明すること

保証協会の手順:供託所からお客さんへの弁済が行われたときは、弁済業務保証金が不足することになるので、支払われた額と同額を、まずは保証協会から2週間以内に、還付された額の弁済業務保証金を供託しなければいけません。

例えば1000万円が客に支払われたら、1000万円を供託するということ。このとき宅建業者からは60万や30万の少ない額しか納付してもらってないので、払った分を請求することになります。

客が損害を受けたとき②

客に還付が行われた時の、保証協会と社員のやりとり(第64条の10)の部分を解説します。

保証協会は客に対して還付があったとき、社員または社員であったものに対し、還付額に相当する額の「還付充当金」を納付するよう通知する義務があります。

それに対し、宅建業者は通知を受けた日から2週間以内に、還付充当金を納付しなければいけません。

社員は↑の2週間以内に還付充当金を納付しないと、その地位を失います(社員じゃなくなるということ)。

社員の地位を失った時どうするか

宅建業者が保証協会の社員の地位を失うとどうなるか?それは次のページ宅建業法(第64条の11)をご覧ください。

簡潔に言うと、納付した弁済業務保証金分担金を取り戻すことになりますが、保証協会への加入してない状態になるので、供託所に営業保証金(主たる事務所1000万、その他の事務所500万)を供託しなければいけなくなります。