宅建試験で言えば「権利関係」のところですが民法560条~578条から引用します。「権利関係」の部分は宅建試験では重要度は高くはありませんが、「売買」や「契約不適合」はやや重要です。
実際に不動産業に勤務することになったときにも大事な部分なので今からしっかり把握しておくことをおすすめします。
- 売主の義務(560条)
- 他人の権利の売買における売主の義務(561条)
- 買主の追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約の解除
- 目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限(566条)
- 目的物の滅失等についての危険の移転(567条)
- 抵当権等がある場合の買主による費用の償還請求(570条)
- 担保責任を負わない旨の特約(572条)
- 代金の支払期限・代金の支払場所(573条574条)
- 果実の帰属及び代金の利息の支払(575条)
- 権利を取得することができない等のおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶(576条)
- 抵当権等の登記がある場合の買主による代金の支払の拒絶(577条)
- 売主による代金の供託の請求(578条)
(権利移転の対抗要件に係る売主の義務)
第五百六十条 売主は、買主に対し、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う。
(他人の権利の売買における売主の義務)
第五百六十一条 他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
(買主の追完請求権)
第五百六十二条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
(買主の代金減額請求権)
第五百六十三条 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
第五百六十四条 前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。
(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)
第五百六十五条 前三条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。
(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
第五百六十六条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
(目的物の滅失等についての危険の移転)
第五百六十七条 売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。
2 売主が契約の内容に適合する目的物をもって、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したときも、前項と同様とする。
(競売における担保責任等)
第五百六十八条 民事執行法その他の法律の規定に基づく競売(以下この条において単に「競売」という。)における買受人は、第五百四十一条及び第五百四十二条の規定並びに第五百六十三条(第五百六十五条において準用する場合を含む。)の規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができる。
2 前項の場合において、債務者が無資力であるときは、買受人は、代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部又は一部の返還を請求することができる。
3 前二項の場合において、債務者が物若しくは権利の不存在を知りながら申し出なかったとき、又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人は、これらの者に対し、損害賠償の請求をすることができる。
4 前三項の規定は、競売の目的物の種類又は品質に関する不適合については、適用しない。
(債権の売主の担保責任)
第五百六十九条 債権の売主が債務者の資力を担保したときは、契約の時における資力を担保したものと推定する。
2 弁済期に至らない債権の売主が債務者の将来の資力を担保したときは、弁済期における資力を担保したものと推定する。
(抵当権等がある場合の買主による費用の償還請求)
第五百七十条 買い受けた不動産について契約の内容に適合しない先取特権、質権又は抵当権が存していた場合において、買主が費用を支出してその不動産の所有権を保存したときは、買主は、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。
第五百七十一条 削除
(担保責任を負わない旨の特約)
第五百七十二条 売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。
(代金の支払期限)
第五百七十三条 売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定する。
(代金の支払場所)
第五百七十四条 売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべきときは、その引渡しの場所において支払わなければならない。
(果実の帰属及び代金の利息の支払)
第五百七十五条 まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する。
2 買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う。ただし、代金の支払について期限があるときは、その期限が到来するまでは、利息を支払うことを要しない。
(権利を取得することができない等のおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶)
第五百七十六条 売買の目的について権利を主張する者があることその他の事由により、買主がその買い受けた権利の全部若しくは一部を取得することができず、又は失うおそれがあるときは、買主は、その危険の程度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。
(抵当権等の登記がある場合の買主による代金の支払の拒絶)
第五百七十七条 買い受けた不動産について契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。この場合において、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる。
2 前項の規定は、買い受けた不動産について契約の内容に適合しない先取特権又は質権の登記がある場合について準用する。
(売主による代金の供託の請求)
第五百七十八条 前二条の場合においては、売主は、買主に対して代金の供託を請求することができる。
売主の義務(560条)
民法第560条を不動産売買のケースで説明します。
ここでは、売主が買主に対して不動産の所有権を正式に移転し、登記を完了させる義務を負うことを定めています。これにより、買主は安心して不動産の権利を取得し、他の誰に対してもその権利を主張できるようになります。
条文を見ると主語は「売主は」であり、述語は「備えさせる義務を負う」となっていることから、売主の義務を規定していることがわかります。
権利の移転の義務→売主は、買主に対して、①現物の引き渡しと②売買された不動産の所有権の移転登記を完了する義務があります。
対抗要件を備えさせる→対抗要件とは、買主が第三者に対して不動産の所有権を主張する(自分のものだと言う)ために必要な条件です。売主は買主に対して対抗要件を備えさせてあげなくてはいけません。
実際には司法書士が所有権移転登記の手続きを進めてくれるでしょう。
他人の権利の売買における売主の義務(561条)
民法561条は、売買対象の不動産の権利(全部または一部)が他人のものである場合のときの、売主の義務について規定しています。
これは、他人のものを売ろうとしている(いわゆる他人物売買と呼ばれる)のです。
売主は、不動産の所有権をその他人から取得し(買い取るなどして)、買主に所有権を移転する義務を負います。
売主Aと買主Bで土地の売買契約をした。売主Aの土地300㎡の一部50㎡は他人Cの土地になっていた。(売主が売却する土地のうち一部が他人の所有である場合)
このとき売主AはCから取得して買主Bに移転する必要があります。
買主の追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約の解除
562条~565条では、売主が引き渡した不動産が、契約不適合だった場合の、買主の4つの権利について定めています。
買主の追完請求権(562条)
民法562条では、不動産取引において引き渡された物が契約内容に適合しない場合の対応について定めています。これをわかりやすく説明します。
いわゆる「買主の追完請求」と「売主の義務」について定めています。
どういうときに請求できるか?というと次の3つが契約と違う場合です。事例もあわせてご確認ください。
①種類が不適合 | 土地の地目が違う。宅地だと思ったら山林だった。 鉄骨だと思ったら木造だった。 |
---|---|
②品質が不適合 | 中古住宅でシロアリ、雨漏り、傾き等を発見した場合。それぞれ修補する必要がでてきます。他には建物の耐震強度が不足している場合もあるけど品質が適合してないことの評価は難しい場合もあります。耐震性、耐火性など設計を精査しないとわからないし中古住宅は経年劣化も考慮する必要がある。 |
③数量が不適合 | 土地の面積が違う。公簿売買で200㎡だったのに実測すると190㎡だった。3LDKと記載なのに2LDKだったとか。これも契約不適合になるかは評価が難しそう。 |
買主の権利は次のようになります。
①修補の請求 | 売主に対して、引き渡された物が契約通りでない場合、その修理や修正を請求できる。 |
---|---|
②代替物の引渡し | 契約内容に適合する代わりの物を引き渡すように請求できる。 |
③不足分の引渡し | 引き渡された物の数量が不足している場合、その不足分を引き渡すように請求できる。 |
売主の選択は以下です。
売主は、買主に不相当な負担をかけない範囲で、買主が請求した方法と異なる方法で契約を履行することができる。 |
ただし例外(第2項)があります。
→不適合が買主のせいで起こった場合、買主は上記の請求を行うことができなくなります。
売主が買主に「移転した権利」が契約の内容に適合しないときも、履行の追完を請求することができる。(565条)
例)契約の内容に適合しない抵当権の負担があった場合には、抵当権を売主が消滅させないといけない
買主の代金減額請求権(民法563条)
563条では前条(第562条)に規定する契約の不適合が生じた場合に、買主が取ることのできる追加の手段について定めています。これをわかりやすく説明します。
買主は、契約の不適合があった場合、売主に対して一定の期間内に履行の追完(修補、代替物の引渡し、不足分の引渡し)を行うよう催告することができます。
↓
売主がその期間内に履行の追完をしない場合、買主は不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができます。
「移転した権利」が契約内容に適合しない時も代金の減額請求ができる(565条)
①履行の追完が不能→修理や代替物の提供が物理的に不可能な場合。
②売主の拒絶→売主が履行の追完を明確に拒否した場合。
③特定の期間内の履行が必要→契約の性質上、特定の日時や期間内に履行しなければならない場合で、その期間を過ぎても履行されない場合。
④履行の見込みがない→催告しても履行の追完が見込まれないことが明らかな場合。
ただし例外(第3項)があります。
不適合が買主のせいで起こった場合、買主は代金減額請求を行うことができなくなります。
債務不履行による損害賠償(564条)
564条は
第562条(追完請求)および第563条(代金減額請求)に加え
①415条(損害賠償請求)第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。が可能であること
②541条・542条(契約の解除)(催告による解除)
第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
(催告によらない解除)
第五百四十二条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
2 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
一 債務の一部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
が可能であること
を示しています。
せっかくなので415条・541条・542条も説明します。
第415条(債務不履行による損害賠償)
債務者が債務を履行をしない場合や履行が不能である場合、債権者(買主)は損害賠償を請求できる。ただし、債務不履行が債務者のせいでない場合は損害賠償請求できない。
例外: 履行不能、履行拒絶、契約解除の場合には履行に代わる損害賠償の請求ができる。
第541条(催告による解除)
債務者が債務を履行しない場合、債権者(買主)は相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がない場合、契約を解除できる。ただし、不履行が軽微な場合は除く。
第542条(催告によらない解除)
以下の場合には、買主は催告を行わずに直ちに契約を解除できる。
・債務の全部の履行が不能である場合。
・債務者が債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合。
・債務の一部の履行が不能、または拒絶の場合で、残存部分では契約目的を達成できない場合。
・特定の日時や期間内に履行しない場合。
・債務の履行の見込みがない場合。
「移転した権利」が契約内容に適合しない時も契約解除ができる(565条)
目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限(566条)
566条では契約不適合があったときに、「買主が売主に通知しないといけない期間」について定めています。
→買主は契約不適合を「知った時から1年以内」に、その旨を売主に通知する必要があります。
買主が1年以内に通知しない場合、不適合を理由として以下の請求をすることができなくなります。
・履行の追完の請求: 修補、代替物の引渡し、不足分の引渡し(562条)
・代金の減額の請求(563条)
・損害賠償の請求(415条)
・契約の解除(541条・542条)
(例えば、既存住宅を買主に引き渡したあと、買主が雨漏りを発見したとして、1年以内に通知だけしておけばよく、その後1年をすぎて修補請求をしても大丈夫ということです。)
売主が引き渡し時にその不適合を知っていた場合、または重大な過失によって知らなかった場合は、この通知義務の制限は適用されません。つまり、買主は1年以内に通知しなくても上記の請求を行うことができます。
数量の契約不適合の期間制限は?
さて、562条の追完請求のところで「種類」「品質」「数量」に契約不適合があった場合を規定していますが、それと比較すると566条では「数量」に関しては言及してないのがわかると思います。
ということはどういうことかというと「数量」に関しては「通知しなきゃいけない期間が無い」ということになります。
するとどうなるかと言うと、以下の図をご覧ください。
1年以内に通知しその後、売主に請求せずにいると「消滅時効」で買主の権利が消滅します。
時効は買主が権利を行使できることを知った時から5年***②
権利を行使できるときから10年***③
なので、図のように整理しました。
「数量」や「移転した権利(他人物売買など)」の契約不適合は担保責任の通知しなければならない期間の制限が無い・・・消滅時効のほうになる(主観的起算点から5年。客観的起算点から10年。)
不適合を知らずに引渡しから10年が経過すると、消滅時効になる。
宅建業法の第40条で不動産屋が自ら売主になる場合の契約不適合の期間の特約の制限第四十条 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百六十六条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。を勉強したと思います。
これは売主が宅建業者の場合は、買主が不適合を通知する期間が「引渡日から2年」より短くしては駄目ですよ、という規定です。
宅建業者としては2つの選択肢があることになります。
1.民法の通り、契約不適合を知ってから1年以内の通知
2.特約で、引渡日から2年以内の通知
不動産屋としてどっちが有利か、通知期間「引き渡しから2年」「不適合を知ってから1年」どっちを選択したいかというと「引き渡しから2年」のほうが責任の期間が短くなる可能性が高いでしょう。
目的物の滅失等についての危険の移転(567条)
567条では、危険の移転について次の2つを定めています。
売主と買主で不動産の売買契約をして、引き渡しを行います。天災地変などで家が滅失したらだれが損をするのか?というのを規定しています。
(1)買主が引渡を受けた場合
引渡し以後に、双方の帰責事由なしで滅失・損傷したときは、買主はどうすることもできない。
①追完請求②代金減額請求③損害賠償請求④契約の解除 ができないし、買主は代金の支払いを拒むことは出来ない。
※一方、売買契約をしたけども、引き渡しの前に天災地変で滅失した場合は、売主が損をすることになります。
(2)買主が受け取らなかった場合
売主が契約に適合する目的物を引き渡したにもかかわらず、買主が受け取りを拒み/または受け取ることが出来ない場合
&
売主による提供があった時以後に、双方の帰責事由なしで滅失・損傷したときも、買主は支払いを拒むことはできない。
抵当権等がある場合の買主による費用の償還請求(570条)
570条では、買い受けた不動産に、抵当権等がある場合に、買主の費用の償還請求について定めています。
契約不適合の権利(先取特権、質権、抵当権)が存在し、買主がその不動産の所有権を保存するために費用を支出した場合。買主は売主に対し、費用の償還を請求することができます。
先取特権 → 特定の債権が他の債権に優先して弁済を受ける権利。
質権 → 債権の担保として物を弁済を受けるまで専有する権利。
抵当権 → 不動産を担保として提供し、債務が履行されない場合にその不動産を売却して弁済を受ける権利。
担保責任を負わない旨の特約(572条)
572条では、売主が担保責任を負わない、という特約をしたときについて説明しています。
売主の担保責任を負わない旨の「特約」を結んだときは、原則として売主は担保責任は負いません。
例外として572条では次の2点を定めています。
①売主が契約の内容に適合しないことを知ってたのに、買主に言わなかった場合
②自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利
↓
売主は担保責任を免れることは出来ない
②については、例えば不動産の売買契約をしたのに、引き渡しの直前に、売主が黙って他人に不動産を譲渡してた場合。すでに他人物になっている&担保責任を負わない旨の特約をしていたとしても、売主の責任は免れることはできませんね。
中古不動産の売買のときに担保責任を負わない特約をするケースがあります。築年数が古すぎてシロアリ、雨漏りがありそう、売主に修補の資力が無いので、売買代金を安くするかわりに契約不適合責任免責にして、のようなケースです。
代金の支払期限・代金の支払場所(573条574条)
573条は売買の目的物の引渡しに期限が設定されている場合、代金の支払いについても同じ期限が設定されているものと推定する規定です。
574条は支払いの場所について規定しています。
不動産の売買契約を結び、契約書に「引渡し予定日は2024年7月1日」と記載されている場合を考えます。
引渡しの期限: 2024年7月1日
代金の支払い期限: 2024年7月1日と推定される
となります。
不動産の売買の場合で一般的には、売主も買主も履行の準備ができ、お互いに調整しあいます。引き渡しは銀行に、売主・買主・不動産屋・司法書士が一同に会し、支払い、鍵の引き渡し、所有権移転登記を行う流れになります。
一同に集まれない場合は、持ち回りで行う場合もあります。
果実の帰属及び代金の利息の支払(575条)
575条では
・売買契約において目的物が引き渡される前に果実(利益)が生じた場合の利益の帰属
・引渡し後の買主の利息支払い義務
について規定しています。この条文をわかりやすく説明します。
(第1項 果実の帰属)
売買の目的物が引き渡される前に生じた果実(利益)は売主に帰属します。果実という表現ですが実際に農作物や、不動産の家賃などが該当します。
(第2項 未払代金に対して発生する利息支払い義務)
物件の引き渡し後、買主は代金の利息を支払う必要が出てきます。しかし代金の支払について期限がある場合、その期限が到来するまでは利息を支払う必要はないとしています。
権利を取得することができない等のおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶(576条)
576条は売買契約において買主が購入した権利を取得できない、または失う恐れがある場合に関する買主の権利を規定しています。
権利の取得が不確実な場合: 売買の目的物について第三者が権利を主張したり、その他の事由により買主が権利を取得できない、または失う恐れがある場合。
支払の拒否: 買主はその危険の程度に応じて、代金の全部または一部の支払いを拒むことができます。
(例外)
売主が相当の担保を供した場合、買主は支払いを拒むことができません。
Bは所有権を取得できない恐れがある
Aが相当の担保を供した時をのぞき、
BはAに対して売買代金の支払いを拒絶することができる
抵当権等の登記がある場合の買主による代金の支払の拒絶(577条)
577条は買い受けた不動産に契約内容に適合しない抵当権の登記がある場合、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、買主が代金の支払いを拒むことができると規定しています。
先取特権や質権も同様です。
売主による代金の供託の請求(578条)
578条では、買主が代金の支払いを拒む場合でも、売主は代金を供託するよう請求できるよう定めています。これは、取引の公平性と安全性を保つための措置です。
供託とは?
供託は、金銭や有価証券を供託所(法務局、地方法務局等)に預けることです。供託された金銭や物品は安全に保管されます。