宅建試験の「相続」に関する重点ポイントを整理しました。解説や図と条文と合わせて確認していくことでより深い理解につながると信じています。

まず先に関連する条文を全て引用します。その次に解説文をまとめて掲載しています。解説を確認したい方はページ中ほどへジャンプしてください。

(相続開始の原因)
第八百八十二条 相続は、死亡によって開始する。

(配偶者の相続権)
第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第八百八十九条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。

(法定相続分)
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

(代襲相続人の相続分)
第九百一条 第八百八十七条第二項又は第三項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
2 前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。
(遺言による相続分の指定)
第九百二条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。
2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

(相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使)
第九百二条の二 被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

(単純承認の効力)
第九百二十条 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

(法定単純承認)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

(限定承認)
第九百二十二条 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。

(共同相続人の限定承認)
第九百二十三条 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。

(限定承認の方式)
第九百二十四条 相続人は、限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。

(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

(遺言の方式)
第九百六十条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

(遺言能力)
第九百六十一条 十五歳に達した者は、遺言をすることができる。

(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

(公正証書遺言)
第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

(秘密証書遺言)
第九百七十条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
2 第九百六十八条第三項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。

第九百七十四条 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
一 未成年者
二 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

(遺言書の検認)
第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。

(遺言の撤回)
第千二十二条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第千二十三条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

(遺留分の帰属及びその割合)
第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。

(遺留分侵害額の請求)
第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
第千四十八条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
(遺留分の放棄)
第千四十九条 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。

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相続とはどういうことか?

相続とは、死亡した人の財産を残された人が承継することです。

この時以下のような呼び方になります。

死亡した人→被相続人
残された人→相続人

相続の開始日とはいつか?

相続の開始日は、「死亡した日」です。(882条)

相続人の範囲と順位(試験で出る?)

親族の中で誰までが相続する権利があるか、順位はどうなのか、覚えておきたいルールを表にしました。

順位 相続人になる人
常に 配偶者は「常に相続人」になります。(890条)
第1順位 子供(あるいは孫)は、「相続人」になります。(887条)
第2順位 親(あるいは祖父母)は、第1順位がいない場合は相続人になります。(889条1項1号)
第3順位 兄弟姉妹は、第2順位がいなければ相続人になります。(889条1項2号)

こういうのは図で見ていくとわかりやすくなります。

このような図の場合、
配偶者と子供(第1順位)が相続人となります。
第1順位がいなければ、そのときはじめて第2順位が相続人に、
第2順位がいなければ、そのときはじめて第3順位が相続人になります。

子がいなくて孫がいる場合とか、親がいなくて祖父母がいる場合も想定し、より明確な表を示します。直系尊属、直系卑属というワードも覚えておきましょう。

順位 相続人になる人
常に 配偶者
第1順位 直系卑属(自分から見て「下の世代」の親族を指します。具体的には、子供、孫、曾孫などが該当します。)
第2順位 直系尊属(自分から見て「上の世代」の親族を指します。具体的には、両親、祖父母、曽祖父母などが該当します。)
第3順位 兄弟姉妹

代襲相続とは何か、またそのルール

代襲相続(だいしゅうそうぞく)は、相続が発生した際に、本来相続するはずだった人が相続開始前に死亡/欠格/廃除によって相続権がなくなっている場合、その人の子供が代わりに相続することです。この人のことを代襲者と呼びます。(887条2項)

代襲者が死亡/欠格/廃除によって代襲相続権を失った場合も、同様にその子が相続します。(887条3項)

【事例】

祖父(被相続人)が亡くなった時、本来なら祖父の財産を相続するはずの父親(祖父の子供)がすでに亡くなっている。
→ この場合、父親の子供(祖父の孫)が父親に代わって祖父の財産を相続します。

代襲相続の対象となるのは孫や曾孫など下の世代です。兄弟姉妹が死亡している場合、その子供(被相続人の甥や姪)も代襲相続の対象となります。

この制度により、相続権が世代を超えて移動することが可能となり、相続権の空白を避けることができます。

「欠格」「廃除」について

欠格とは・・被相続人等を殺害したり詐欺・脅迫で遺言を書かせる・妨害などして相続権がなくなることです。悪いことをした者は相続人になることができない、と定めています。

廃除とは‥被相続人を生前に虐待するなど、著しい非行があったとき、被相続人が家庭裁判所に請求し、【遺留分を持つ】相続人から相続権をなくすこと。(兄弟姉妹には遺留分が無いので廃除できない。遺言に相続分ゼロと書けばよい)

※遺留分については後の章で図解しています

相続分とは「いくらもらえるか?」相続の割合のこと

相続分とは相続の割合のことで、以下の2つがあります。

①法定相続分(民法で定めてある相続分のこと)(900条)
②遺言による相続分の指定(902条)

①法定相続分(900条)

民法では誰かいくら貰えるかを定めていますので、順位と相続分についていくつかのパターンで図で示していきます。

まずは再度、順位を①②③で示しています。

以下に誰が相続人になるかを整理しました。

パターン 誰が相続人か
A 配偶者がいる 配偶者+最も順位の高い人
B 配偶者なし 最も順位の高い人
C 配偶者がいて第1~第3がいない 配偶者

パターンAは、配偶者がいる場合は必ず配偶者が相続人になり、加えて最も順位の高い人も相続人になることを示しています。
パターンBは、配偶者がいない場合は、高順位の人だけが相続人になることを示しています。
パターンCは、配偶者しかいない場合は、配偶者のみが相続人になることを示しています。

以下に法定相続分(誰がどれだけ受け取るか)を整理しました。

相続人 配偶者の法定相続分 高順位の人
配偶者のみ 財産の全部 なし
配偶者+ 第1順位 財産の1/2 1/2
配偶者+ 第2順位 財産の2/3 1/3
配偶者+ 第3順位 財産の3/4 1/4

相続人が配偶者のみのときは配偶者が100%を相続しますが、配偶者+第◯順位が相続人の場合は、順位によって配偶者がもらえる相続分が変わります

以下に図示していきます。

相続人が配偶者しかいない場合

配偶者と第1順位(子供)がいる

★養子と実子は同じ扱い
★非摘出子(婚姻してない男女間の子供)は摘出子(婚姻してる男女間の子供)と同じ扱い

配偶者はいるが子供が居なくて第2順位(親)がいる

配偶者がいなくて、第2順位(両親)と第3順位(兄弟)がいる

配偶者はいるが子供が居なくて第3順位(兄弟)がいる

父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分の場合(900条4項)
例えば異母兄弟のケース

配偶者も子供もいない、父母もいなくて、祖父母がいる

ちょっとここ注意です。

父と母に1/2ずつ行って、それを祖父母で分けるのではなくて、存在する祖父母3人が1/3ずつになっています。

配偶者と子が死亡して、孫がいる

似ている1つ上の祖父母のケースと比較して違いを把握しておきましょう。

②遺言による相続分の指定(902条)

被相続人が遺言で共同相続人(相続する権利を持つ複数の人々)の相続分を自由に定めることができます

また、その相続分の決定を第三者に委託することも認められています。

相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使(902条の2)

債務(借金など)を相続した場合、債権者はどのように払ってもらえるかを規定しています。

被相続人が遺言で共同相続人の相続分を指定していたとしても、債権者(被相続人に対して債権を持つ人)は、その指定に関わらず、各相続人に対して法定相続分に基づいて債務の返済を請求できます。

【例外】
ただし、債権者が特定の相続人に対して、遺言で指定された相続分に応じた債務の承継を承認した場合、その相続人に対しては遺言で指定された相続分に応じた請求が行われることになります。

図示すると以下のようなイメージになります。

被相続人
(債務者)
共同相続人 法定相続分 遺言 債権者が
承認なし 承認すれば
1/3 1/2 ←1/3払え ←1/2払え
1/3 1/4 ←1/3払え ←1/4払え
1/3 1/4 ←1/3払え ←1/4払え

相続の単純承認/限定承認/相続放棄

相続人は、相続の開始があったことを「知った時」から3ヶ月以内に、単純承認/限定承認/相続放棄を選択しなければなりません。(915条)

それぞれどういう意味と効力があるか整理します。

単純承認(920条)

単純承認すると、全ての権利義務を承継します。(920条)

次の場合は単純承認したものとみなされるので気をつけないといけません。(921条)

・相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。
預貯金の解約をしたり、不動産を売却しちゃうと単純承認とみなされます。あとから限定承認や相続放棄することはできなくなります。

・3ヶ月以内に限定承認/相続の放棄をしなかったときは、自動的に単純承認したことになります。

限定承認(922条)

限定承認とは、相続人が被相続人(亡くなった人)の遺産を受け継ぐ際、その遺産の範囲内でのみ被相続人の債務(借金など)や遺贈(遺言による贈与)を返済することを条件として相続を承認することです。

相続人は全財産を引き継ぐ場合、被相続人の債務もすべて引き継ぐことになります。

しかし、限定承認を行うことで、相続によって得た財産の範囲内でのみ債務や遺贈を返済すればよいとすることができます。つまり、相続財産を超える債務は返済しなくてもよいということです。負債を支払えば手元にプラスが残ることになります

手続き

・相続人全員が共同で限定承認を行わなければなりません。(923条)

・限定承認を行うには、相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。(924条)

※遺贈・・・遺言によって死後に財産を特定の人に譲ること。相続人以外の第3者である場合もある。
※贈与・・・生前に自分の財産を他人に無償で譲ること

相続の放棄

相続の放棄とは遺産も負債もすべて引き継がないことです。

被相続人に多額の借金があったり、
相続人が遺産を必要としないとき、
相続人が複数いる場合の家族間の調整や、手続きを円滑に簡素にするときに行われる場合があります。

【手続き】

・相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出なければなりません。(938条)

・相続人全員で申し出る必要はありません。(1人で申し出ることが可能)

相続の放棄をすると、初めから相続人とならなかったものとみなされます。(939条)
→よって相続放棄をした場合、代襲相続は発生しなくなります。
→よって次順位の相続人が相続権を持つことになります。

相続を放棄すると、その分の相続分は他の相続人に分配されます。これにより、他の相続人の相続分が増えることになります。

遺言の規定と、3つの種類を把握しよう

遺言を有効にするためには、民法で定められた形式に従う必要があります。その方式に従わない遺言は無効になります。(960条)

遺言は遺言者が死亡したときから効力を生じます。遺言に特定の条件が付けられているときは、その条件が成就したときに効力が発生します。(985条)

遺言者はいつでも遺言の全部または一部を撤回することができます。そのときも定められた方式に従う必要があります。(1022条)

もし後の遺言のほうが違うことを言っていた場合は、後から言った方が有効になり、前の遺言は撤回されたことになります。(1023条)

自筆証書遺言(968条)

最もシンプルな自分で遺言を書く方法がこちらです。

①全文、日付、氏名を手書きして、押印しなければならない。

②相続財産の目録は手書きじゃなくてもよい(パソコンで書いてもよいし、通帳でもよい)。ただし他の全ページに署名・押印が必要。

自筆証書遺言の保管制度(法務局における遺言書の保管等に関する法律)

自筆証書遺言は自分で保管しておきますが、法務局に保管してもらうこともできます

遺言が紛失したり誰かに改ざんされること無く、自分の死後に確実に遺言を相続人に伝えることが出来ます。

この制度を利用することで、遺言書の検認手続きが不要となります。

公正証書遺言(969条)

公正証書遺言は、公証人が作成するため、その内容が法的に有効であることが保証されます。

公証役場で、公証人と2人の証人の立会で公正証書遺言を作成することができます。手数料は数万円かかります。

公正証書で遺言をする場合は、次の形式に従う必要があります。

形式

①少なくとも2人の証人の立ち会いが必要
②遺言をする人が、公証人に対して、口頭で遺言の内容を伝える
③公証人が口述を文字に書き起こし、遺言者と証人に読み聞かせるか、書いた内容を見せる
④遺言者と証人が、内容の正確さを確認したあと、それぞれが署名・押印する
(遺言者が署名できない場合は、公証人がその理由を記載して署名に代えることができる)
⑤公証人が、公正証書の手続きを守って作成したことを記述して、署名・押印する

作成した遺言は公証役場で保管されます。

秘密証書遺言(970条)

秘密証書遺言は、遺言の中身を公証人に知られずに作成できるメリットがあります。また遺言書をパソコンで作ることもできます。

秘密証書で遺言をする場合は、次の形式に従う必要があります。

形式

①遺言者が自分で書いた遺言書に署名・押印、封筒に入れ、同じ印章(ハンコ)で封印します。

②遺言者が公証人1人と証人2人以上の前で封筒を提出し、封筒が自分の遺言書であること、書いた人の氏名と住所を公証人と証人に伝えます。

③公証人が遺言者の申述(伝えた内容)と提出した日付を封筒に記載します。その後、公証人、遺言者、証人全員が封筒に署名・押印します。

証人及び立会人の欠格事由(974条)

次の者は、遺言の証人または立会人となることができません。

18歳未満の未成年
推定相続人、受遺者、これらの配偶者および直系血族
・公証人の夫や妻、公証人の親族で、四親等以内の関係にある人(例: 両親、兄弟姉妹、叔父叔母、甥姪、いとこなど)、公証人の事務所で働いている書記やその他の従業員

※推定相続人・・・遺言者が死亡した際に、法定相続人として遺産を受け取ることが予想される人(例: 遺言者の子供や孫など)
※受遺者・・・ 遺言によって遺産を受け取ることが指定されている人
※公証人・・・通常は弁護士など法律の専門家から選ばれます。法律に基づいて公文書を作成する専門職

遺言書の検認(1004条)

遺言書の検認とは、家庭裁判所が遺言書の存在と内容を明確にし、偽造を防止する手続きです。

遺言書の保管者や、発見した相続人や関係者が、家庭裁判所に検認の申立てを行います。

自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、遺言書が発見されたら必ず検認を受ける必要があります。公正証書遺言の場合は、検認は不要です。

3種の遺言について整理とまとめ

遺言 作成方法 保管 検認 メリット デメリット
自筆証書遺言 全文・日付・氏名を手書き、押印 自宅か法務局 必要(法務局は不要) ・無料
・法務局預けはチェックを受けられる
・内容不備の可能性
・紛失、改ざんのおそれ
・自宅保管は発見されない可能性
公正証書遺言 公証人に口述し公証人が書面化 公証役場 不要 ・無効になりにくい
・紛失、改ざんが無い
手数料や証人の確保
秘密証書遺言 自分で作成し封印、公証人が日付、全員で署名押印 公証役場 必要 ・内容を他人に知られない
・パソコンで作れる
手数料や証人の確保

遺留分(相続時に少なくとも保証される額)

遺留分とは相続人が最低限受け取る権利を保障するための制度です。遺言によって他の人に全財産が遺贈された場合でも、遺留分を持つ相続人はその分を請求することができます。

遺留分が定められてる人は以下の3者です。

◯配偶者
◯直系卑属(子、孫など)
◯直系尊属(親、祖父母など)

兄弟姉妹は遺留分がありません
✕兄弟姉妹

遺留分の割合(1042条)

・配偶者や子供などの場合は、1/2をかける
・直系尊属のみが相続人である場合は、1/3をかける

通常の相続分と、遺留分を図示していきましょう。

①配偶者と子供がいる場合

配偶者と子供がいる場合、配偶者は通常は1/2ですので、それに1/2をかけて=1/4が配偶者に最低限保証される権利となります。子供も同様に1/2をかけます。

②配偶者と父母がいる場合

それぞれ1/2をかけます

③直系尊属のみの場合

1/3をかけたのが遺留分です

④兄弟や姉妹には遺留分は無い

遺留分が無いということは最低限保証される額がないということです。(次章で説明する遺留分侵害請求権もありません)

遺留分侵害額の請求(1046条)

遺留分を侵害された場合、遺留分権利者は侵害額に相当する金銭の支払いを、財産を受け取った受遺者や受贈者に請求することができます

例えば、遺言によって特定の相続人や他人に全財産が遺贈され、他の相続人の遺留分が侵害された場合、その相続人は遺留分侵害額を請求できます。

遺留分侵害額請求権の期間の制限(第1048条)

遺留分侵害請求権は、相続の開始&遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しない場合、時効により消滅します。***①

相続開始から10年が経過した場合も、同様に消滅します。***②

遺留分の放棄(第1049条)

相続が始まる前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可を受ける必要があります。この許可を受けた場合にのみ、放棄が有効となります。
共同相続人のうちの一人が遺留分を放棄しても、その放棄は他の共同相続人の遺留分には影響を及ぼしません。つまり、他の相続人の遺留分はそのまま保持されます。

以上、相続と遺言の重点ポイントでした。