はじめに:事故物件とは?心理的瑕疵の意味と告知義務

事故物件とは?

不動産における「事故物件」とは、過去に建物やその敷地内で、人が亡くなるような事件や事故が発生した履歴のある物件のことを指します。これには以下のようなケースが含まれることが一般的です。

事故物件の例
  1. 死亡事件
      殺人事件や暴力事件によって建物内人が死亡した
      火災等によって人が死亡した
  2. 自殺
      物件内で自殺があった場合。
  3. 孤独死(特殊清掃が必要な場合)
      高齢者や単身者が誰にも発見されず長期間亡くなった状態であった場合。
  4. 不審死
      他殺か自殺か事故死か不明で警察の捜査が行われている場合。
  5. 自然災害による死亡
      地震、土砂崩れ、洪水などの災害で人が死亡した

心理的瑕疵物件における「告知義務」とは?

事故物件は「心理的瑕疵物件」とも呼ばれることがあります。これは、事件や事故の履歴があるために、その物件を利用することに心理的抵抗を感じる人が多いという意味です。

2021年に国交省により「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が策定されました。

不動産屋や売主や大家は、事故物件の事実について借主や買主に告知する義務があり、以下のように、告知が必要な期間や詳細の基準が明示されました。

① 自然死や不慮の事故での死亡は告知しなくても良い。
② 自殺や死亡事件が起こったケースや、①で特殊清掃が行われた場合
   賃貸の場合は3年から経過後は告知しなくてもよい。
   売買物件の場合は期間によらず告知が必要。

例えば、
・同居する家族が病死者をその日に発見した場合は告知が不要
・死亡した場所が家の中ではなく、家の外だったら告知は不要。

と言った具合。また難しい場合もあります。

例えば、病死の家族で救急車や警察を呼んだケースは一般的には告知は不要ですが、周辺住民がその様子を見てたりすると後で噂になったり、引っ越してきた人に当時のことが伝わったりします。そこで無告知だとトラブルの元になるかもしれないので、予め告知しておく‥といった対応が取られる場合もあります。

事故物件は売れない?その理由と現実的な対処法

なぜ事故物件は売れにくいのか?

①事故物件が売れにくい最大の理由は、購入者の抵抗感だと思います。

室内はキレイに清掃されてるにも関わらず、事故死が起こったことは購入者にとって精神的な負担や不安になってしまうものです。

②購入後の再販が難しくなる可能性もあります

事故物件は、購入後に何年か住んだ後に売却しようとしても「次の買い手が見つかりにくい」というリスクがあります。

③市場価値の低下は避けられません

事故物件は一般的な物件に比べ、需要が低いため売却価格が下がります。周辺の物件相場と比較して20%~50%程度安くなることも珍しくありません。

これらの理由から、事故物件は通常の物件よりも売れない傾向があります。

告知事項あり物件でも売却するためのポイント

事故物件を売却する際には、以下のポイントを押さえることでスムーズに売却しやすくなります。

①専門の不動産会社に相談する

事故物件の取り扱いに慣れた不動産会社であれば、告知義務や売却価格の調整を含め、適切なサポートを受けられます。

②高く売れることを期待しない

相場より高く設定すると買い手が見つかりにくくなるため、事故物件の市場価格を正確に査定し、適正な価格で売り出すことが重要です。相場の50~60%なら買い手がつきやすいです。

③リフォームやクリーニングを行う

物件内のリフォームや特殊清掃を行い、見た目や内装を整えることで購入者の心理的抵抗を軽減できます。

④告知義務を誠実に果たす

事故物件である事実を隠すと、後々トラブルや契約解除につながるリスクがあります。正直に告知し、安心して購入してもらうことが重要です。

⑤投資家むけに売却する

投資家は安ければ喜んで購入する傾向がありますし、買って賃貸に出せば数年以降は告知義務がなくなるため、売却のハードルが下がります。

⑥訳あり物件買取専門業者を利用する

通常の売却が難しい場合は、事故物件専門の買取業者に相談することで早期の売却が実現することもあります。

事故物件を売るには?売却までの手順と注意点

事故物件は相場並の価格で売れにくいというだけであって、売ることはできますので安心して欲しいと思います。

とは言え出来るだけ高く売りたいのが心情でしょうから、まずは査定をしてもらうのが第1です。

売却査定の依頼方法

以下の手順で売却査定を依頼すればOKです。

  1. 不動産屋を選ぶ

  2. 2社以上依頼する

  3. 状況を伝える

  4. 買取業者にも聞く

①事故物件の取り扱いに強い不動産会社を選ぶ

通常の物件と違い、事故物件の売却には専門知識が必要です。事故物件の売却実績がある不動産屋に依頼します。

三井不動産など大手の不動産屋でもいいし、地場の不動産屋でも構いません。

②複数の業者に査定を依頼する

一社のみの査定ではなく、複数の不動産会社から査定額を提示してもらうことで、適正な相場価格を把握できます。

③査定時に状況を正確に伝える

告知義務があるため、物件内で発生した事故や事件の内容を正確に伝えることが重要です。隠したまま売却すると確実に後のトラブルにつながります。

早く手放したい(親が亡くなって相続した等)ならその旨を伝えることです。

周囲に知られたくない、大っぴらに広告したくないならその旨も伝えましょう。

④買取専門業者の利用も検討する

通常の売却が難しい場合は、事故物件専門の買取業者に直接売却することで、早期売却が可能です。

不動産屋選びのポイント

・売却方法の提案が柔軟な会社を選ぶ
通常売却、買取、リフォーム後の再販など、状況に応じた提案が出来る会社だと円滑に進めやすいでしょう。

・査定額と手数料を比較する
複数の会社で査定を行い、売却価格や仲介手数料を比較して選びましょう。

事故物件の売却相場と査定方法の実例

事故物件の売却相場はどれくらい?

事故物件の売却相場は、通常の物件に比べて20%~50%程度安くなる傾向があります。

軽度の瑕疵→自然死や孤独死(早期発見)の場合、相場の10%~20%程度の減額。
重度の瑕疵→自殺、殺人事件、長期間の孤独死、悪臭などの場合、20%~50%程度の減額。

こんな感じでしょうか。参考にしてみてください。

もちろん、需要の高いエリアであれば相場に近い価格で売れることもありますし、事故発生から時間が経過するほど割引率は小さくなります。

市場における孤独死マンションの売却相場

マンションは共有部分があるため亡くなった場所によっては告知義務がない場合もあります。

自室で亡くなった場合は、立地や築年数によって異なりますが、周辺相場より20%~30%低い価格で査定されることが多いです。

事故物件の処分や売却時に知っておきたい法的知識

何はともあれ告知しておけば大丈夫ですが、もし黙って売ってしまおうと思ってる方がいたらこの章を確認しておいてください。

告知義務違反が引き起こすリスク

  • 契約解除
    買主が後から事故物件であることを知った場合、契約解除を求められる可能性があります。契約解除になれば受け取った金銭に利息をつけて買主に戻し、移転登記した物件も戻します。
  • 損害賠償請求
    告知義務を果たさず、売却後に買主が心理的苦痛や物件価値の減少を訴えた場合、損害賠償を請求されることがあります。
  • 裁判沙汰のリスク
    契約解除や損害賠償に応じない場合は当然ですが法的な問題に発展し、最悪の場合、裁判で争う事態になるでしょう。

事故物件を売るための戦略・成功事例

事故物件を売却した成功事例

事例1:特殊清掃とリフォームで印象改善

物件概要:都内のワンルームマンションで孤独死が発生。
課題:心理的瑕疵により、購入希望者が現れず相場より30%安い査定。
対策:専門業者による特殊清掃と消臭対応。壁紙や床材のリフォームを実施し、室内の印象を改善。
結果:相場の約85%で売却成功。リフォーム費用は売却額で回収できた。

事例2:事故物件専門の買取業者を活用

物件概要:地方都市の一戸建てで自殺が発生。
課題:地域の需要が低く、一般の買主が現れなかった。
対策:事故物件を専門に扱う買取業者へ売却依頼。
結果:相場より低いものの、短期間で現金化し売却完了。売主は早期の処分を達成した。

事例3:投資家とコネクションがある不動産屋

物件概要:首都圏の築古戸建てで自殺が発生、現場の見た目や悪臭は問題なし
課題:早く売ること
対策:投資家とコネのある地場不動産屋へ依頼
結果:すぐ投資家がやってきて、指値はあったものの相場の40%減で早期売却できた。

相場より高く売るコツ

①特殊清掃とリフォームの実施

室内を清潔にし、事故の痕跡を残さないことで心理的抵抗を軽減します。
壁紙や床の張り替えは比較的低コストで効果的です。

3LDKの清掃なら8万円前後で出来ますし。壁・天井クロス張替えは6畳1部屋10万円前後。床CF張替えも6畳で10万円程度です。

②物件の魅力を強化する

リフォームや家具付き物件として売り出し、「お得感」を演出することで購入者の関心を高めます。

しかしリフォームは先に費用が出てしまうので、出来れば現況で売却したほうがリスクは低減されます。

③売却ターゲット

出来れば一般市場むけに売却したほうが高く売れます。どうしても売れない場合には買取業者や投資家向けに売るような流れにすればよいでしょう。

事故物件を処分したい、早く売りたいなら

事故物件は現場の状況次第では一般人や投資家でも購入を躊躇してしまいます。内見対応にも時間がかかります。

早く処分したいときは訳あり物件買取業者に依頼するのがよいでしょう。業者の買取であれば1日で現金化できますし、不動産の移転登記もお任せです。

金額は一般よりも安くなりますが、売却後のトラブル等も起こり得ないので安心ですし、心の重荷からも開放されますから。