多くの中小企業やスタートアップ企業では、目先の反響や売上を目指すために、詐欺一歩手前の
・嘘や不確実な情報を顧客に伝えること
・紙媒体広告やWEB広告を乱用すること
・安い顧客対応をなおざりにすること
を行ったりします。
そして不動産屋でも当たり前のように行われている現場があります。
こういった企業は短期的には売上を上げるかもしれませんが、長期的には会社の信用を落とし、従業員が疲弊し、様々な面でコストがかかり、人材が集まらず、場合によっては行政処分になることもあります。
この記事では不動産屋で使われるダークパターン(消費者を意図的に誤解させたり、不利な選択を取らせたりするために設計された手法やテクニック)と、その弊害。
また消費者から見た信用できない不動産屋の見分け方についてお伝えしていきます。不動産は高額ですので少しでもおかしいと思ったら危機を察知して離れることが肝要です。
信用できない不動産屋がよくつかうダークパターン
偽の緊急感
消費者に急いで決断させる手法です。「この物件は人気でいま買付を入れないと次の内見者が買うかもしれない」等と言い、即決させるために緊急感を煽ります。
希少性を強調
こちらも消費者の判断を急がせる手法です。「このエリアでは希少な物件で、1年に数件しか出ないから買うなら今」等と言い判断力を鈍らせ買付を求めます。
意図的に曖昧な表現
あいまいで具体性に欠ける場合、消費者は本当の意味や条件を理解せずに契約を進めてしまう可能性があります。たとえば、「たしかエアコンも引き渡し備品になっている」や「◯◯小学校区のはず」といった曖昧な表現で期待を持たせるものの、実際には違っている事があります。
「ウチだけの特別価格」や「残り1部屋」
よく使われるのが、物件の価格や空室状況に緊急感を持たせる手法です。「売主さん当店限定で50万円値引き」や「このマンションの空きは残り1部屋です」といったフレーズで、顧客に急いで決断させるよう促します。
賃貸における隠れたコスト
物件の広告では家賃や購入価格が安く見えるように設定されているが、実際に契約に進むと、仲介手数料、礼金、火災保険、保証会社の費用、管理費など、さまざまな追加コストが後から発覚することがあります。これによって、最初に想定していたよりも多額の費用がかかることが多いです。
物件の魅力を過大に表現
広告では「駅徒歩5分」「日当たり良好」などと書かれているものの、実際には駅までの道が狭かったり、急な坂がある、または南側にマンション建設計画があったりします。物件の魅力を誇張し、実際の状況とは異なるイメージを与えることがよくあります。
キャンセル不可や解約金の説明不足、有耶無耶にする
賃貸契約や購入の契約を進める際、解約やキャンセルにかかる費用や条件が十分に説明されないことがあります。特に賃貸契約の場合、早期解約時の違約金やクリーニング費用が思わぬ負担になることもありますが、事前にしっかりと説明されない場合があります。
おとり広告
実際には存在しない物件や、すでに契約済みの物件を広告に掲載し、問い合わせが来ると「この物件はもう決まってしまいましたが、他にも似たような物件がありますよ」と、別の売りたい物件に誘導する手法です。これは法律で規制されていますが、未だに行われることがあります。
説明を端折る
物件について言いにくいことやデメリットを隠す目的で、重要事項説明書や契約書に小さく書いてあるものの、説明を端折ることをします。これによって消費者が後から気づき、言った言わないの問題に発展する場合もあります。
未解決の問題を隠す
物件に何らかの問題(騒音、近隣トラブル、老朽化など)がある場合、その情報を隠したり軽く扱うケースがあります。「この物件は築古なのに状態もよくまだまだ現役で住めます」などといい物件見学時には問題が見えないようにし、契約後にトラブルが発覚することもあります。
賃貸契約時のオプション契約の強要
賃貸契約時に不要なオプション(24時間サポートや、インターネット回線、特定の火災保険など)を強引に契約させられるケースがあります。「これは必須です」と言われることが多いですが、実際には顧客が選べるものであることが多いです。
「◯◯銀行なら審査に通ります」と言いながら審査落ち
内覧後に「審査は問題なく通ります」と言われ安心したものの、実際には後から「審査に落ちました」と伝えられることがあります。最初の段階で無理に安心させ、物件に興味を持たせるためのトークで、実際の審査結果はその後の問題となる場合があります。
物件写真の編集
物件の写真が広告に掲載される際、広角レンズを使ったり、明るさや色合いをフォトショして実際よりも魅力的に見せる手法です。内見時に「写真とは違う」というギャップを感じることがよくあります。
価値を高く見せる
物件の価値を高く見せたり、不確実な情報を伝え、お買い得であるように思わせます。「この周辺にはショッピングモールが出来ると聞いていて今のうちに買えば価値が上がる」などといい顧客の期待感を煽ります。
査定額をわざと高く見積もる
売主に自社を魅力的に見せるために、物件の査定額を市場価値以上に高く提示します。売主はその金額に期待して契約しますが、実際の販売が進まない場合に「市場の動向が変わった」などの理由で値下げを迫られます。多くの不動産屋で行われている。
「売れなかったら買い取ります」保証の条件を隠す
「売れなかった場合は当社が買い取ります!」と謳い、売主に安心感を与えますが、実際にはその買取価格が大幅に低い、または条件が非常に厳しい場合が多いです。最初の広告ではこれらの不利な条件が目立たないようにされています。
「成約率〇〇%」の誤解を招く表現
自社の成約率が高いことを強調し、「当社なら半年以内で売れます!」とアピールしますが、この成約率は物件の種類や価格帯に限定されたものであることが多く、全ての物件に当てはまるものではありません。しかし、売主に「高い確率で売れる」と思わせる効果があります。
「売却成功事例」の選別
お客様の口コミ風の広告で、「このエリアで〇〇万円で売れました!」といった成功事例を広告に掲載しますが、これは特に条件が良かった物件の例のみを選び出していることがほとんどです。一般的な物件はやはり一般的な価格でしか売却できないにもかかわらず、全ての物件が同じように売れるかのように錯覚させます。
「買取最短1日」と期間を短く見せる
買取までのスピードをアピールするために、「最短1日で入金完了!」と広告に記載しますが、これは非常にレアなケースに基づく数字です。買取するためには物件調査や役所調査を行う必要があるのと、社内の意思決定が必要、資金をすぐに用意する必要があるため、1日買取なんてほとんど難しいのです。
他社の査定を低く見積もるように誘導
「他社と査定額を比べてください」と言いつつ、高額な査定額を提示し、他社の査定がそれより低い場合は「その会社では適正に評価されていない」と断定します。これにより、自社の信頼性を強調しますが、実際には高額査定の方こそ現実的でないことが多いです。
「あなたの物件を買いたい人がいる」とチラシを入れる
広告で「当社には特別な買い手がいる」「購入希望者の条件にあう物件だ」といった、他社では得られないような特別なコネクションを強調し、多くの売却希望者に期待を持たせ反響につなげようとしますが、現実にはそのような人はいません。
問い合わせてきた人の物件の価値が低い場合にはお断りするケースがありますし、不動産屋に預けてみたものの買付が入らず「買いたいと言ってた人はどこに行ったの?」ということがあります。
売却後も住み続けられる
いわゆるリースバックの闇。売却後も住み続けられると安心感を与えるけど買取価格が極端に安く、家賃が非常に高い。売っても3年分の家賃ぐらいにしかならない。だったら売らずに住み続けたほうがマシと言えます。
無意味な会員登録
不動産屋のホームページに会員限定で公開される物件の写真を見たことある人は多いのではないでしょうか。会員登録すれば実際に見られるわけですが基本的にはスーモやathomeに掲載されている物件がわざわざマスキングされて自社HPに掲載されているだけなのです。会員登録で個人情報を収集してから電話をかけ来店や要望のヒアリングをするという手法です。
勝手にメルマガ登録
1度でも問い合わせをかけるとメールやSMSでメルマガが勝手にスタートします。日本では「特定電子メール法」によって、広告や宣伝を目的とした電子メールの送信には、事前に受信者の同意(オプトイン)を得ることが義務付けられているにもかかわらず。承諾なしのメルマガはただの迷惑メールでしかない。そして簡単には解除出来ない仕組みになってるケースが多いです。
ダークパターンを使う信用できない不動産屋が陥ること
これらの手法を使うことで反響も増え、契約件数も増えます。しかしそれは短期的な話で、一方ではクレームや恨みの温床になります。
その結果として次のような事が起こってきます。不動産屋で次のような事が起こっている場合は見直すことをおすすめします。
電話応対の事務やカスタマーサポートの負担増
クレームの電話や問い合わせが増えます。営業マンや経営者は逃げ続けるので顧客と直接でやりとりする事務員やカスタマーサポートにしわ寄せが行きます。結果としてそれらの人材の離職率が高くなっていきます。
Googleマップへの低評価口コミの投稿
最近はGoogleマップへの口コミが積極的に行われる傾向があると思っています。業者の嫌がらせだという人もいますが結構真実を投稿している人も多いのです。そしてマップの口コミを見てから来店や店舗へのアクセスを決める人が増えているので、具体的な低評価や口コミが増えればそれだけ1反響を取るためのコストが増えることになります。
高い離脱率
一度は顧客を引き込み契約まで進んだとしても、「聞いてた話と違った」「説明がいい加減だった」「契約後に不具合が出た」と感じて解除されることが増えます。これにより、一度集めた反響が成果に結びつかないため、より多くのリードや見込み顧客を集める必要が生じ、結果的に新規顧客獲得コストが増加します。
悪評が広まる
ネットだけでなく同業者や離職した人材からも悪評が広がっていき、本人達の知らないところでヘイトが溜まっていきます。
新規反響コスト増
昨今のネット事情で悪評が広まり、同じ広告費をかけても反響が得られにくくなっていきます。「信頼できない」「不誠実な会社」というイメージが定着し、ブランド価値が低下すると、自然と新規顧客を惹きつける力も弱まり、広告やマーケティングに多くの資金を投入しなければならなくなります。
離職率と採用コストも増
誰しも法令を遵守し仕事をしたいと思っているはずです。違法ではないものの倫理的にどうかと思う手法が使われると、それに携わる人材は疲弊していき会社への信頼感も失います。常に人が入れ替わり採用コストも増え、また目先の利益を追うようになっていきます。
ダークパターンを使っている会社ですから、求人広告と実際の仕事内容とで異なるケースもあるでしょう。「聞いてた仕事と違う」「給与に見合った仕事じゃない」と試用期間中の退職はもちろん、採用合格後の辞退もありえます。
簡単に競合他社に負ける
会社への怨嗟やヘイトが悪評やWEBの口コミとして広がれば競合他社にも負けます。例えば売主が一括査定を申し込み数社から査定を取り寄せるときでも、媒介をもらえず他社に取られてしまう事例が増え、やはり反響コストも増えていくでしょう。
売上を評価基準にすると、安い顧客が無視される
営業マンの評価基準は会社によって異なりますが、売上だけを基準にすると、多くの会社で問題が生じがちです。それは、低価格の顧客を無視するようになるということです。たとえば、調整区域にある物件を売りたい売主や、安い物件に興味を持って問い合わせてきた人、遠方の物件に関する問い合わせなどが無視されがちです。
顧客を無視すれば、当然ながら「連絡が来ない」といった不満が発生し、会社に電話がかかってきます。事務員がその電話に対応し、営業マンに伝え2度手間になります。また他の顧客からも催促やクレームの電話が入ります。こうしてクレーム対応に追われ、事務作業に支障が出る一方、会社の評判は外からも内側からも悪くなっていくのです。
しかし会社の悪評を増やしている張本人である営業マンは、自分の成績が良ければ給料も高くなります。そのため、個人としては利益を得ているのに、会社全体が崩壊に向かうという悪循環が生じていることに気付かないのです。売上だけを評価基準にすると営業マンのスタイルがダークパターンに陥りやすくなるという事例です。
以上です。他にもパターンを見かけたら更新していきます。