不動産一括査定サイトを見ると、
・不動産一括査定をやって査定額が高い業者と取引しようとか
・いますぐ複数社の声を聞いて査定価格を比較しよう
といったワードが並んでいると思いますが、はたしてメリットがあるか、デメリットは無いのか心配な方も多いでしょう。
一括査定を申込すると、不動産屋はどのように動くのか、その裏側をお伝えするとともに、注意点・デメリット等、公平な情報を提供していきたいと思います。
このブログは不動産屋に勤務する宅建士が消費者むけに役立つ情報をお伝えするブログです。
不動産一括査定を受けると不動産屋はどうするか?
不動産一括査定サイト(HOME4U、イエウール、Suumo、HOME’S、Athome)で不動産の一括査定を申し込むとどうなるか?
→その直後に一括サイトに登録している不動産屋にメールが飛んできます。
・物件住所・土地・建物・面積・築年数
・売却理由・申込人の個人情報(メール、電話)
これらの情報が書かれたメールです。
この後の不動産屋の流れとしては「今すぐに申込人に電話をする」ということを行います。業界では「架電」と言います。
時間帯は関係なく土日でも朝8時でも夜遅くても査定依頼メールが来たということは、そのタイミングには確実に申込人はスマホをいじってるでしょうから。
架電して何をするかといえば「訪問査定の予約を取る」ことが最優先です。前後に色々ヒアリングは有ると思いますが最終的には訪問査定をさせてもらうことが重要だと考えているのです。
訪問査定をして自社のPRをし専任媒介契約を結んでもらうことがゴールです。専任媒介契約を結べば他の不動産屋とは契約できないので1社専任で売主さんから物件を預かり販売活動や広告活動をすることができるようになるからですね。
ここで起こるモラル的な問題(利用者からするとデメリット)は有る
・早朝や夜に電話をするかどうか
・備考欄に”メールでの返事希望”と書いてあるのに架電するかどうか
この部分は不動産屋ごとに対応が異なります。多少迷惑でもクレームがあってもいいから架電せよ、という不動産屋もあるし、そうでない不動産屋もあります。(迷惑考えずに架電する業者はいずれ倒産するのだろうと思いますが)
そういう悪い不動産屋に勤務している従業員は大変です。クレームを直接受けることになりますから。そういった会社の在り方は従業員のプレッシャーを増幅させ、働く意欲を削いでゆきます。離職率も高いはずで常に求人が出ています。
出来るだけ早く電話することを目指すのが不動産屋
査定依頼メールを受けて架電するまでの時間によりアポ取得率が異なります。時間が増えれば増えるほどアポ取得率が下がっていくので、できるだけ早く架電することを目指しているはずです。
一括査定ですから他社が電話をかけている場合もあり話中の場合もある。そんなときは5分おき、10分おき、午前中1回、午後2回など、繰り返し架電してアポ取得を目指すでしょう。
不動産屋の事務員がこの作業をやってる場合もあるし、架電専門業者に委託(アウトソーシング)してる場合もありますね。
家電専門業者の場合も、最初の架電が繋がらなければ、引き続きつながるまで1週間ぐらい架電し続けアポ取りを目指します。
不動産一括査定の注意点:あまり売れそうにない物件の場合は電話すらしないことも
今までお伝えしたのは「売れそうな物件」の場合です。
逆に「あまり売れなさそうな物件」というのもあります。例えば県の街づくり計画で建築を制限されたエリア、調整区域にある物件。田んぼ、畑、林地の物件。
あまり売れそうにない物件の場合、不動産屋としては意欲は下がります。ほとんどの場合で架電もメール返信もしない場合もあるかもしれません。
せっかく一括査定を申込したのに、何も連絡が無いことも起こり得るのが注意点の1つです。
お断りの連絡をしてくる不動産屋があったとすれば、その業者はとても優しい業者です。売れにくい物件を処分する別の手段や相談先(役所等)を教えてくれるかもしれません。
不動産売却一括査定はデメリットも多い
一括査定は私はやったほうが良いと思っています、その理由は後で述べますが、まずデメリットをお話します。
たくさん電話がかかってきて嫌になる
複数の不動産屋から営業電話が一斉に来るため、対応に時間がかかります。全社訪問査定させろと言ってくるのでスケジュール調整も大変になります。
自動車一括査定で査定額を知りたいだけなのに電話がジャンジャンかかってきて嫌になる・・なんて話をよく聞きますが、それと同じことが不動産一括査定でも起こります。
駄目な不動産屋にあたりトラブルになる場合も
不動産屋の実力や対応に差があり、必ずしも信頼できる会社ばかりとは限りません。下手な会社と契約してしまうと、連絡は来ないわ段取りは悪いは約束はすっぽかされるわ、契約書はガタガタだわ、売主に不利な契約になりトラブルになるなんてこともあります。
高額査定の注意点
高い査定額に惑わされることもあります。各社が競争して高めの査定額を提示することがあるのですが、実際に売り出してみると反応が全くなくいつまでも売れ残り物件みたいになります。やがて価格を下げて売らなければならず、売却価格との差が生じ失望することがあるでしょう。
出された査定額で売れると誤信する
査定額はその不動産屋が自信を持って売れると言っている価格だと誤信する人が多いでしょう。不動産屋は専門家に見えますからね。しかし実際にその価格で売れず時間が過ぎていくこともあります。
契約をせまられるトラブル
契約のプレッシャーが起こり得ます。一部の不動産屋から強引な営業や早急な契約を求められる場合があります。
これらのデメリットを踏まえ、利用者は慎重に査定結果を比較検討し、自分に合った不動産会社を選ぶ必要があります。
不動産一括査定のメリットと注意点
メリットとデメリットの両面を提示するのが公平だと思います。ここではメリットをお伝えしつつ、どのように活用したらよいかアドバイスしたいと思います。
適切な会社選びをするために、一括査定を使うことができる。
いい会社を選ぶために一括査定を使うことが大事です。
複数社に査定を申し込めば、各社の対応がわかります。
不動産屋の対応は営業マンや会社の姿勢の現れです。この営業マン駄目だなと思ったらお断りすることが大事です。
不動産は価格が大きいので失敗したときの損害が大きくなりますから、少しでもおかしいと思った会社とは契約しないことをおすすめします。
それらを一括査定で判断できるのはメリットと言えます。
本当に悪質な不動産屋ってあるので、ついでにGoogleマップでその不動産屋のクチコミを見ておくことをおすすめします。
近隣直近の成約事例を教えてもらえる
不動産屋によりますが、近隣直近の類似不動産の成約事例を持ってきてくれることがあります。
それを見れば自分の不動産がどれぐらいで売れそうか目安になります。その成約事例とあなたの不動産の差異を明確に提示できる業者は論理的に信じられる業者です。
すぐ売れる価格、相場なりの価格、チャレンジ価格がわかる
ほとんどの不動産屋が高めの査定額を出してくるかもしれません。「高く売れるならこの不動産屋に任せてみるか、売れなければ値下げすればいいし‥」となりがちです。
結局どの不動産屋が売り出しても、買い手が現れなければ売れません。特定の不動産屋だけが持ってる販売チャンネルなんてものは今の時代ありません。ネットのポータルサイト(athome、suumo、homes)を抑えておけば、どの不動産屋でも似たり寄ったりです。
何がメリットかといえば、前項で言った「近隣直近の成約事例」と「全社の査定」を比較することで、「だいたいどれぐらいの価格で着地しそうか」が分かる点でしょう。
早く売りたいなら相場より安く売り出せばいいし、高く売れるチャンスを逃したくなければ高めの価格から売り出し、徐々に値段を下げていけばよいのです。
査定額で売り出さなければいけないルールはありません。結局は売主さんの意向を価格に反映して売り出すことになります。
(高すぎるとなかなか売れず広告費ばかりかかるので、不動産屋から契約を断られる場合もありますが。)
簡易査定や、売る意欲が低い人はお断りされるトラブルも
査定には2段階あります。簡易査定と訪問査定です。簡易査定は訪問せずにメールに記載している程度の情報だけで査定をします。
簡易査定で査定額を知りたいだけ、という人は多いのですが、不動産屋は訪問査定で媒介契約を取りたいと思っているのでその両者の温度感が違うということはよくあります。
簡易査定だけを希望だと不動産屋もあまりやる気が無いかもしれません。「売る気がないなら申込してくんなよ」ぐらい思ってそうです。
何故かというと簡易査定でメールや資料を郵送しても、返事がほとんど無いからです。私の経験ですと簡易査定を行ってメールして、売主から返答があったのは1割程度だと思います。
簡易査定とはいえ査定するのに1時間はかかりますから、それを無視されるのはとても辛いことなのですが。
売る気はないけど査定額を教えて欲しい人 vs 時間の無駄だから査定したくない不動産屋
という図式でトラブルになるケースもあります。メールや電話では受付するものの営業マンがやる気がなくて査定をしない事例も経験したことがあります。
「いつまで待っても何の連絡も査定結果の通知もない」とクレームが来たり。お互い時間の無駄なので最初から簡易査定は受け付けませんとでも書いておけばいいのにと思いますね。
簡易査定とは何をやっているのか?
ここで簡易査定とはどういったことをやっているのかをお伝えしておこうと思います。不動産屋によって異なると思いますが
・物件の住所の特定(Googleマップで外観チェック)
・土地面積の特定
・場合によっては登記簿の取得(1通350~600円)
・都市計画や用途地域や調整区域の確認
・前面道路(市道か私道かその他か)の確認、幅員の確認
・再建築可能かの確認
ざっとこんな感じでしょうか。今までの販売経験がある営業マンなら地区と面積と築年数とGooogleマップでの外観チェックで、だいたいの価格は出ます。そうでない場合でも査定ツールがあるので近年の取引事例から査定額を出していきます。
ここまで1時間はかかるでしょう。そして資料にまとめメールの文章を書いて送信。
ここまでやっておいて返信が10人に1人ですから、人件費等の無駄でしかないのです。事業判断としては簡易査定は切り捨てるという判断をする業者もいるかもしれませんね。
とはいえ一括査定メールを受信した時点で、一括査定サイトに1万~2万円を支払わなければならないので無下にもできません。
一括査定、その後の動きのアドバイス
一括査定の申込をし、複数社の不動産屋の架電をさばき、訪問査定をしてもらえばOKです。
複数社と一般媒介契約を結ぶか、
1社と専任媒介契約を結ぶかは売主さん次第です。
物件に自信がある(価格が高い)方は複数社と一般媒介契約を結べばよいですし、
物件に自信が無い(価格が安い/売れなさそう)な方は、1社と専任媒介契約を結ぶ、というのを基準に考えてみてください。
価格が安い物件は不動産屋も実入りが安いので、あまりやりたがりません。それも複数社に依頼してるとそちらの不動産屋で契約になったりすると、かけた広告費が無駄になるので、不動産屋が広告してくれない場合があります。
なので、安い物件の一般媒介契約はおすすめしません。
ということで、不動産一括査定をすると不動産屋はどう動いているのか。そして利用者側のメリット・デメリット、その他のアドバイス記事でした。
参考になる部分があれば幸いです。