宅建試験の出題範囲は、今年の4月1日現在施行されている法令に基づきます。
そこで2024年→2025年の宅建試験で法改正により変更になった部分をまとめてみました。下の方はあまり重要ではありませんが念の為チェックしておいてください。
国土交通大臣免許の申請先変更(令和6年5月25日 宅地建物取引業法)
宅建試験ではやや重要な部分です。改正前後の条文と解説を記載しています。
改正前
(申請書等の経由)
第七十八条の三 第四条第一項、第九条及び第十一条第一項の規定により国土交通大臣に提出すべき申請書その他の書類は、その主たる事務所(同項の規定の場合にあつては、同項各号の一に該当することとなつた者の主たる事務所)の所在地を管轄する都道府県知事を経由しなければならない。
2 第五十条第二項の規定により国土交通大臣に提出すべき届出書は、その届出に係る業務を行う場所の所在地を管轄する都道府県知事を経由しなければならない。
改正後
(都道府県知事への書類の写しの送付等)
第七十八条の三 国土交通大臣は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める書類の写しを、遅滞なく、宅地建物取引業者の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事に送付しなければならない。
一 第三条第一項の免許をした場合 第四条第一項の免許申請書及び同条第二項各号に掲げる書類
二 第九条の規定による届出を受理した場合 当該届出に係る書類
2 国土交通大臣は、第十一条第一項の規定による届出を受理したときは、遅滞なく、同項各号のいずれかに該当することとなつた者の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事にその旨を通知しなければならない。
国土交通大臣免許の申請先が変更になりました
今までは都道府県知事を経由して国土交通大臣に免許申請を行っていましたが、これを廃止。
令和6年5月25日以降は各地方整備局に申請することになりました。
またこれにあわせて、国土交通省手続業務一貫処理システム(eMLIT)を使ってオンライン申請が可能となっています。
残念ながら該当する条文を見つけられず、国土交通省の以下のページにて情報を拾いました。
国土交通省
免許申請時の添付書類が変更になっています
改正前
免許の新規申請、更新、変更の際、専任の宅地建物取引士に関する「身分証明書」および「登記されていないことの証明書」の提出が必要とされていました。
改正後
これらの書類の提出義務が廃止されました。ただし、事務所の代表者や役員、政令で定める使用人については、引き続きこれらの書類の提出が必要です。
安い物件の仲介手数料上限アップ(令和6年7月1日施行)
低廉な空家等の売買にかかる代金が800万円以下の場合、媒介報酬額が最大33万円(税込)受け取ることができるようになりました。重要なので学習必須です。
安い物件の売買仲介だと、手数料が安くて不動産屋がやりたがらない背景がありました。そこで報酬額の上限を上げることで不動産屋のやる気を促す施策が取られました。
重要ポイントなので詳細は以下の記事で解説しています。
レインズへの登録項目の厳格化(令和7年1月1日施行 宅地建物取引業法施行規則)
媒介契約したときのレインズへの登録項目の1つが厳格化されています。
(指定流通機構への登録事項)
第十五条の十一 法第三十四条の二第五項の国土交通省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一 当該宅地又は建物に係る都市計画法その他の法令に基づく制限で主要なもの
二 当該宅地又は建物の取引の申込みの受付に関する状況
三 当該専任媒介契約が宅地又は建物の交換の契約に係るものである場合にあつては、当該宅地又は建物の評価額
四 当該専任媒介契約が専属専任媒介契約である場合にあつては、その旨
指定流通機構(レインズ)への登録に関する部分が厳格化されています。これは現在もしばしば行われている物件の囲い込みを是正するための措置の一環です。
宅建業者は売主と、専属専任媒介契約・専任媒介契約を締結した際はレインズに物件を登録することが義務付けされています。レインズに登録する際の「取引の申し込みの受付に関する状況」の最新の状態が事実と異なるときは法第65条第1項の指示処分の対象となります。
レインズの登録画面に「取引状況」の欄がありますが宅建業者としては常に最新性を保つことが求められるようになった、ということです。
・公開中:客付業者から案内受付OKの印
・書面による購入申込あり
・売主都合で一時紹介停止中
客付業者はレインズでこの情報を確認し、購入希望者がいる旨を、売主側業者(元付業者)にコンタクトを取ります。
ところが「公開中」なのにも関わらず「案内が出来ない」と言われたらおかしいですよね。
公開中の状態のときは原則案内OKのはずです。これによって物件の囲い込みを防ごうとしています。
また売主に渡されるレインズの登録証明書にはQRコードが付与され、宅建業者がどのようにレインズに登録したか、取引状況が「公開中」になっているかいつでもスマホでチェック出来るようになりました。
宅建業免許申請時の書類(令和7年4月1日施行 宅地建物取引業法)
宅建業者の免許申請時に添付する書類について変更点がありました。(赤字部分)
宅建試験では重要度は低いです。
(免許の申請)
第四条
2 前項の免許申請書には、次の各号に掲げる書類を添付しなければならない。
一 宅地建物取引業経歴書
二 次条第一項各号に該当しないことを誓約する書面
三 法人である場合においては、その役員の略歴を記載した書類及び政令で定める使用人があるときは、その者の略歴を記載した書類
四 個人である場合においては、その者の略歴を記載した書類及び政令で定める使用人があるときは、その者の略歴を記載した書類
五 事務所について第三十一条の三第一項に規定する要件を備えていることを証する書面
六 法人である場合においては、直前一年の事業年度の貸借対照表及び損益計算書
七 個人である場合においては、資産の状況を示す書面
八 その他国土交通省令で定める書面
免許申請書に添付する書類の追加です。
法人:役員・政令使用人の略歴書類
個人:事業主・政令使用人のの略歴書類
法人:前年度の貸借対照表と損益計算書
個人:資産状況を示す書面
宅建業者名簿の搭載事項(令和7年4月1日施行 宅地建物取引業法)
こちらは宅地建物取引業者名簿に登載される情報の変更点です。
(宅地建物取引業者名簿)
第八条 国土交通省及び都道府県に、それぞれ宅地建物取引業者名簿を備える。
2 国土交通大臣又は都道府県知事は、宅地建物取引業者名簿に、国土交通大臣にあつてはその免許を受けた宅地建物取引業者に関する次に掲げる事項を、都道府県知事にあつてはその免許を受けた宅地建物取引業者及び国土交通大臣の免許を受けた宅地建物取引業者で当該都道府県の区域内に主たる事務所を有するものに関する次に掲げる事項を登載しなければならない。
一 免許証番号及び免許の年月日
二 第四条第一項各号(第五号を除く。)に掲げる事項
三 第五十条の二第一項の認可を受けているときは、その旨及び認可の年月日
四 第六十五条の規定による処分を受けたことがあるときは、当該処分の年月日及び内容
ここを解説すると、
2.4条1項各号(5号を除く)に掲げる次の事項
一 商号または名称
二 法人:役員の氏名、政令使用人の氏名
三 個人:氏名、政令使用人の氏名
四 事務所の名称、所在地
六 他の事業
3.取引一人代理の認可を受けてるときはその旨、認可年月日
4.指示処分、業務停止処分の年月日と内容
となっています。以前は専任宅建士の氏名を登載することが求められていましたが、それが無くなりました。
宅建試験のために覚えておいたほうがいい部分です。
従業者名簿の記載事項の変更(令和7年4月1日施行 宅地建物取引業法施行規則)
事務所に置いておく従業者名簿への記載事項についても変更になっています。宅建試験では覚えておいたほうが良い部分です。
(従業者名簿の記載事項等)
第十七条の二 法第四十八条第三項の国土交通省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一 生年月日
一 主たる職務内容
二 宅地建物取引士であるか否かの別
三 当該事務所の従業者となつた年月日
四 当該事務所の従業者でなくなつたときは、その年月日
従業者名簿に搭載する事項のうち、従業員の生年月日は記載しなくなりました。
標識の記載事項の変更(令和7年4月1日施行 宅地建物取引業法施行規則)
宅建業者の標識への記載事項も変更になっています。宅建試験では覚えておいた方が良いです。
(標識の掲示等)
第十九条
2 法第五十条第一項の規定により宅地建物取引業者が掲げる標識の様式は、次の各号に掲げる場所の区分に応じ、当該各号に掲げる様式とする。
一 事務所 別記様式第九号
標識の様式九号が変更になりました。
以下の項目が削除されています。
・この事務所に置かれている専任の宅地建物取引士の氏名
以下の項目が追加となっています。
・この事務所に置かれている専任の宅地建物取引士の数
・宅地建物取引業に従事する者の数
・この事務所の代表者氏名
つまり、標識には専任の宅建氏名は書かなくてよく、代わりに宅建士数と従業者数を記載することになっています。
また今までは代表者氏名だけでよかったのが、「この事務所の代表者氏名」も記載することになっています。この事務所の代表者というのは一般的には店長で政令使用人のことですね。
仲介以外の業務をする時(令和6年7月1日施行)
「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」で不動産屋の媒介業務以外の不動産取引に関連する業務について明示されるようになりました。
空き家管理、不動産コンサルティング等の、媒介業務以外の業務を行う場合、媒介業務とは別の業務であることを契約書にしたためて説明し理解を得たうえで媒介報酬とは別の報酬となることを明示することをすれば、その報酬を受取ることは問題ないとされました。
今までは明記されていなかったので、各不動産屋がコンサル料や謝金やローン手数料の名目で、報酬を受け取ってた会社もありますが、ちゃんと契約書で説明しないと駄目だと、ということになった訳です。
デジタルサイネージを活用した報酬の額と標識の掲示(令和6年7月1日施行)
最後は「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」への追加事項です。宅建試験では重要ではありません。
書面ではなくて、デジタルサイネージ(PCを使った映像等による掲示物)が、法が定めるルール内で可能であることが明示されています。
では、以上となります。